2015年07月27日

フイチン再見!(村上もとか)1巻〜5巻

【5巻の感想を追記しました:2015/7/27】

フイチン再見! 1 (ビッグコミックス)
フイチン再見! 1 (ビッグコミックス)

とっくに書いたと思ってたのに、まだ感想書いてなかった。
いま、4巻発売をきっかけに再読中です。

女流漫画家・上田としこさんの人生を描いたマンガ。すごい。
上田としこさんといえば、私には「フイチンさん」でおなじみのひと。
母が「フイチンさん」が大好きで、復刻版を購入して、私も読みました。
その後大人になってから、アニメビデオが発売されたことを知って、それを制作会社から通販で購入して、母と一緒に見ました。
でもそういうきっかけがなかったら、私の世代には上田としこ先生は、まったく身近じゃない作家かもしれない。
上田トシコ - Wikipedia

長生きなさって、2008年に90歳でなくなったときはニュースで聞いて亡くなってしまったことに驚きました。
いつまでもフイチンさんみたくお元気でいらっしゃるような気がして。

この「フイチン再見!」は、そんな上田としこ先生の生涯を描くマンガになると思います。
もちろん、作品以外の先生についての情報はほとんどなかったので、こうやってマンガで読めることはすごいことだと思ってます。

以下マンガの感想。

フイチン再見! 1 (ビッグコミックス)
フイチン再見! 1 (ビッグコミックス)

1巻は、第一話で上田としこ先生が漫画家として活躍されているシーンから。
もう第一線の人気作家として、多忙な毎日を過ごされ、一緒に住む家族たちの生活を支えています。
そこに、なくなったはずの父親の幻が現れる。会話しているうちに、思い出されるのは幼い日から今日までのこと……

ハルピンでの生活が描かれる1巻。私、そういえばハルピンのことなにもしらないな。だから、西洋のような町並みがあったということ、そこに日本人、中国人、ロシア人、ユダヤ人とさまざまな人が住んでいたこと。なにもかも興味深いです。日本人で、お嬢様である「としこ」も、楽しみも悩みもあるのです。

1巻の後半では東京へ戻ってくる。学校は日本の学校へ通うため。兄の友人からの紹介で、イラストレーターで漫画家の松本かつぢ先生の弟子になったものの、先生はなにも教えてくれないで、もって行く絵やマンガにマルバツをつけるだけ。
それも6ヶ月続けていたら、先生からイラストの仕事をいただく。

周りの女学生は、どんなお相手のところへ嫁ぐのか・どういうお嫁さんになるのかを考えているのに、としこはひとり自立するためにマンガの道を目指す。

フイチン再見! 2 (ビッグコミックス)
フイチン再見! 2 (ビッグコミックス)

2巻。先生の紹介もあって、新聞に連載を始める。
父の反対も押し切って、マンガをもっと上手に書けるように、東京で絵の練習を続ける。
日本は戦争の時代に。絵を描く、マンガを描く、それももしかしたら危ういかもしれない時代。
友人の紹介で出会った近藤日出造氏には、「お嬢さんすぎて世間離れしているから、漫画家に向いていない」といわれてしまう。
働いてもっと世間を知ったほうがいい。とのアドバイスを受け、仕事を探すものの、女性の給料はとしこが父から送ってもらってる仕送りの3分の1しかないことを初めて知り愕然とする……

今まで読んだ戦争時代の話と、あまりにかけ離れた生活をするとしこの姿が逆に目新しい。
こうの史代さんの「この世界の片隅に」でも、戦時中といえども楽しみをもって暮らしたり、節約の中に贅沢を感じていたりと、「戦争は戦うだけじゃなく、生活のとなりに戦争があるんだ」ということを改めて感じたものですが、この「フイチン再見!」でのとしこの姿は、贅沢ができないはずだった時代に、多くの民衆より一段上の裕福な生活を送る人がいたこと、そしてそんな人ですら戦争の渦に巻き込まれ、世間の目を感じながら生き、思うがままには生きられなかったということを表していると思う。

・真珠湾攻撃・開戦の一報を、としこが銀座のパーラーで久しぶりのホットケーキをランチにほおばりながら知るシーン
・ハルピンでの生活中に雑誌や文化などで触れたアメリカの大きさ・強さを、裕福でインテリだからこそ肌で感じている
というところは、いままでに私が読んだ戦時中を描いた作品の中には出てこなかった、新しい目線だと思った。

フイチン再見! 3 (ビッグコミックス)
フイチン再見! 3 (ビッグコミックス)

3巻。画学生仲間の弦田氏に肖像画を描いてもらい、これまでの仲間と学んだ3年間を想いながらハルピンへ「帰国」するとしこ。
過激なハンガーストライキを経て、働くことを父に認めてもらったとしこは満州鉄道に勤め始める。
巨大な、国家そのもののような鉄道会社。
そこで知る、勤労女性の待遇の低さや、周りの人間とどうかかわっていくかの経験。
貧困と罪が身近に転がってるのを知る。
このマンガ、出てくる風景もきれいで人々も服装もみないいんですが、食べ物がおいしそうでいいですよね〜。としこがいいものを食べてるってのもあるかも(笑)
女性の環境を向上させるために立ち上がったとしこと、それを良く思わない人たちとの対立もある。
3巻はマンガをほぼ描かない。一回だけ、ポスターをマンガのように描いて、自分が人に与えられるマンガとは何かに気づくシーンは、この先重要になってきそう。


フイチン再見! 4 (ビッグコミックス)
フイチン再見! 4 (ビッグコミックス)

4巻。滅私奉公にいそしむとしこは、志願して慰問列車に乗り込み、鉄道沿線の各所をめぐる。
そこでも、であった少年たちの心をつかんだのはとしこが描くマンガ!
1945年8月を迎えて、日本は戦争に負ける。「だが、満州の日本人の”戦争”はここからはじまったのだ――」という裏表紙の言葉通り、あっという間に変わっていくとしこの周辺。
終戦の日はもう我慢せずにケーキを食べに行く! と息巻くとしこだけど……
戦争は終わったはずなのに、敗戦国としての試練がつぎつぎ襲ってくる。

本当にすごい話ですよ。この辺の、終戦後の満州のエピソードはほかの本でも読んだことがなくて、いままで触れてこなかった。上田家の居住していたアパートメントに三千人の日本人が避難してきて、ちからをあわせて共同生活を始めるんですよ。すごい……
「絵がかける」ことはここでもフルに活用される。

5巻の予告が最後にあったけど、不穏な感じですね……1巻の冒頭で語られてるからわかってるけど、つらいエピソードが増えそうだ。

フイチン再見! 5 (ビッグコミックス)
フイチン再見! 5 (ビッグコミックス)

4巻で終戦。5巻は終戦後ハルピンに残った日本人に起きたこと。
敗戦国・日本へ、掌を返したような中国・ソビエトからの仕打ち。
あちこちで起こる残虐な出来事が「明日はわが身」という不安のなか、としこたちは家族でひっそりと生きていく。
それでも、人気漫画のキャラクターを拝借して書いた絵が売れるところなどは希望もありますね。
また、日本が負けても変わらずに支えてくれる現地の中国人のあたたかさ。
行きずりの中国人兵士から受けた寛大な対応もあって、どんな状況でも100%つらいってことはないのかもしれないと思える……

シベリア抑留の話もそうだけど、終戦で日本はあっという間に復興に向かって、昭和30年には近代化が進んでるのに、海外に取り残された人たちの終戦後の苦労は大変なもの。
自分の国に帰るってことがこんなに大変だとは。

劣悪な状況の中、やさしくしてくれた人たちとも別れて日本へ向かうとしこたち一家。
でも、移動を始める前にとらわれてしまったお父さんがどこでどうしているか気になる……
っていうか、ああ……つらい展開です。そして6巻へ続く。


【続きを読んだら追記します】
ラベル:漫画家マンガ
posted by 藤村阿智 at 10:44| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月13日

僕だけがいない街6巻(三部けい)

僕だけがいない街 (6) (カドカワコミックス・エース)


1巻から5巻まで出てるところで購入したので、そこまでは がーっと一気に読んでしまった。
間をおいて6巻の発売。


【以下ネタバレあり】

5巻の途中まではうまくいきそうだったのに、やっぱりあの人が犯人だということが判明……したところで主人公・サトルは退場するハメに。

いままでは時を巻きもどすちから「リバイバル」を使うことでなんとかやり直してきたけど、
自分の危機にちからを使えなくて(使えないルールなのかは微妙なところ。本人もちからの詳細をわかってないみたいだから……)
巻き戻った分の時間を、眠ってすごしちゃってほとんどスタート地点に戻ってきてる……ってかんじかな。


「真犯人」の過去のくだりは、まああってもよかったけどなくても良かったのかも。テンポがそこだけ違う気がして。

目覚めたサトルが、自分が活躍して解決したはずの過去を覚えていないというのはなかなかびっくりしたし面白い展開だと思った。

この後は真犯人との決着までが描かれるのかな。10巻以内……あと数巻でまとまれば全体的に面白い漫画になりそう。

なんとなくはまりきれないのは、やっぱり能力の範囲・弱点・制限・引き金がわからないせいかなあ。
私はお堅いSF脳なもんで……とくにタイムトラベルのちからって言う、いろんな能力の中で最強クラスのちからの適用範囲や条件が解析・説明されないのはつらい。

私自身が「タイムトラベルは怖い」と思ってるからなあ……うまく行ってる展開のときのほうが、「せっかくやったのに過去に戻っちゃったらつらい」って言う不安が「僕だけがいない街」を読んでるあいだずっと心のどこかにある。

あー、「ひぐらしのなく頃に」で何度も「ああーうまくやったのに……」って気持ちを覚えてるせいかな。あれはでも「そうなる条件」がなんども説明されてたからがんばれたんだよな〜。
posted by 藤村阿智 at 13:54| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月07日

逃げるは恥だが役に立つ1巻〜4巻(海野つなみ)

hontoで電子書籍版1巻が0円だったから読んでみたんですよ。
kindleでも0円なんでよかったら試し読みをしてみてください。
ただし試し読みをしたらいまでている分全部を買ってしまうでしょう。私がそうでした。

逃げるは恥だが役に立つ(1)


森山みくりさんは就職難の昨今、就活がうまくいかないからと大学院まで行った結果、余計に就活がままならなくなり、派遣で働いてみたもののそちらも契約終了。しかも親は遠くへ隠居するという。
そこで、みくりが仕事として家事代行をしていたクライアント・津崎平匡さんと相談の結果、
契約結婚! 仮面夫婦! 愛はない事実婚状態
……に仕事として取り組むことに。









4巻まで読み終わって。

二人は! 契約結婚したときは足並み揃って、お互いを一番理解して、上手に結婚生活を送っていたのに!
いまや契約結婚をこじらせてしまっている


少女マンガ……というかヤング向け女性コミック? (kissはどういう位置づけなんだ……)
なのでさわやか〜で大人な悩みの少女マンガという感じなんですが、
とにかくこれはジタバタ案件ですよ!(※読んでいると照れてクゥ〜となってモッハァー!となってもどかしくてジタバタしてしまうという案件)


あんまり、人がちゃんと話し合わないでお互いモンモンとしてるだけですれ違っちゃうのって好きじゃないんですが(自分がそういうタイプなので同属嫌悪です……)
この二人はいい感じですね。まだ我慢できるし、みくりさんかわいい。小賢しかわいい。平匡さんかわいい。ジャスト私好み。いちいち童貞っぽいところとかこじらせちゃっててめんどくさいところとか。いや二次元の好みの話ですけど……
主人公として読者寄りのキャラであるはずのみくりさんも、実は考えが読めないキャラクターですね。
だからまだどうなっていくのかわからない。


特殊な舞台設定やキャラ設定でもないのに、ひとつのとっぴな「契約結婚」という話題だけでここまでぐっと来る内容にできるのが作者さんのすごいところ。さすがベテランですね。世界もそんなに広くないところで展開しているのに、このこじんまりさがテーマにあっててちょうどいい。


5巻まで出ているんですが、ほかの本も買う関係でとりあえず4巻までにしちゃったので、はやく5巻が読みたいような、読んじゃったら今度6巻が出るまでが長いような。


こちらもどうぞ。
逃げるは恥だが役に立つ 5巻〜8巻の感想
ラベル:女性
posted by 藤村阿智 at 16:30| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月06日

桑田乃梨子先生と愛猫にょろりさんの話

先日発売された、「だめっこどうぶつ」7巻をさっそく買いました。
桑田乃梨子さんの漫画は発売されたらすべて買うのです。



だめっこどうぶつ」は、生き物(その種族)としてどこかダメなやつが集まる森で繰り広げられる、
着ぐるみキャラたちの四季の楽しみや、ぐでぐでしたりほのぼのしたりねたみうらみしたりって言う様子を描いた四コマ漫画です。もう10年も続いている長期連載作品ですよ。
7巻も変わらず面白かった。


でも、7巻を読み始める前にカバー折り返しの「作者自画像&コメント」をチラッと見ちゃったんですよ……
!!
っと私が激しく動揺してしまいました。
涙する桑田先生のイラストと、いつも傍らに描かれている愛猫「にょろり」の姿がないのを見てしまったのです……。



中学生の頃に桑田漫画に出合ってから20年以上、ずっとファンで漫画はすべて買って読んでいるのです。
1999年発売の「飼うか飼われるか」という動物エッセイも発売してすぐ買って読みました。
「飼うか飼われるか」は作者が飼っている動物のエピソードではなくて、読者投稿や作者が取材に行ったペット関連施設や動物園・水族館などのレポート漫画が収録されています。

しかしその「飼うか飼われるか」の執筆中(1997年ごろ)に、桑田先生が迷いネコを拾います。
飼い主が現れず、そのまま桑田先生んちのネコになった「にょろり」さん。
とまどいながらも溺愛する様子が少しずつかかれるようになります。



「飼うか飼われるかR」として復刊してるので今もそのエピソードは読むことが出来ます。
元の本より収録が増えているので前の本を持ってる人にもいいかも。

その後発売される単行本の、最後にいつも収録されている「おまけまんが」の中にも毎回にょろりさんは登場するようになります。
にょろりさんが来てから描かれた「真夜中猫王子」は、いままでよりいっそう猫の描写が愛らしくなって、さすが猫を飼うと違うな〜と感じます。



にょろりさんと桑田先生、というエッセイも。
「日々是敗北」


さらに「にょろりがもしかしたら執事のように考え、行動しているのかもしれない……」と
ある意味妄想のような、いやいやエッセイで事実のような、不思議な「現実逃避漫画」である
「ねこしつじ」シリーズもあります。
   


4冊も。



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桑田先生のマンガについて書き込む2ちゃんねるのスレ(@少女漫画板、最近見てないな……)でも、
以前からおまけ漫画を読んだ人が「にょろり元気そうでよかった」とか「にょろりの近況が気になってオマケ漫画から先に見てしまう」という書き込みをしていました。
「にょろりがシニア向けフードを食べるようになったとあって心配。でも15歳だもんな」って書き込みも見た記憶があります。
あそこの住人のみんなは今どういうことを書いてるのかな。(だからといって見に行く気も起きない……よけい悲しくなりそうで)
読者の多くがにょろりさんのことを気にしていたんだと思います。


私はここ数年、猫のことを考えれば、にょろりさんは20歳近くになっているのだからお別れのときが来るのかもしれない。と思って、おまけ漫画を読むのも勇気がいるようになってました。

なのに「だめっこどうぶつ」7巻では(この記事の最初に描いたとおり)手が滑って本編を読むより先に知ってしまい……
「えっ!! 今回のオマケ漫画にはなんと描いてあるのだろう」と、単行本の最後を見ましたが、7巻にはオマケ漫画はありませんでした。
かわりに、カバーを取った(本体のほうの)表紙に、にょろりさんが旅立ったことがそっと描かれていました。

いち読者にすぎない私がこんなにさびしいなんて、実際に18年も一緒に過ごしていた桑田先生の寂しさは想像しきれません……


改めて、いろんな桑田本のオマケ漫画にすこしずつ描かれているにょろりさんのことを読み返したりしています。



posted by 藤村阿智 at 14:44| コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする