
大島志乃ちゃんは母音で始まる言葉の発音がむつかしい。
だから自分の名前も言えない。
つまり吃音症のある少女の話なんだけど(作者はあとがきで、あえて吃音・どもりという言葉を使っていないと書いている。感想にも使いたくなかったけど、それだと書くのが難しいから使っちゃう。wikipediaの作品紹介ページはうまく避けて紹介しているな)
よかった。
きっちり一冊に、きれいにまとまっていて読みやすいし無駄なところもぜんぜんない。すごい。
このまま1時間半ぐらいのアニメ映画にできそう。実写じゃなくてアニメがいいなあ。
表情がすごくいいから。
高校へ入学して、自己紹介でやらかしたくないと志乃ちゃんは練習までしてたのに、やっぱりうまくいかない。周りのオトナは理解を示してくれようとするけど、逆につらい。
でも、あることがキッカケで友達ができる。いや、まだ志乃ちゃんは友達だと思えていなくて、疑っていて、友達になれるかもしれないと胸をときめかせているんだろうな。
そもそも購入したきっかけが、吃音ものとしてだったので、しょっぱなから自分と重ねてしまってつらい。
ワタシの話をしてしまうと、実は吃音で誰かにからかわれたり、指摘された記憶はないのだ。
おなじ音を繰り返すんじゃなくて、3音〜5音ぐらいで繰り返してるからわかりにくいのかも。
それ以上に、周りに恵まれている気がする。
子どもの頃は吃音がなかったし、それ以外のところでからかわれてたからな……
ワタシが戦っている気になっている相手も、志乃ちゃんとおなじなのかもしれない。
志乃ちゃんは自己紹介でやらかしたあと、クラスメートの菊池君が、自分のまねをして他人に「アイツ変なんだぜ」って言ってるところに遭遇してしまう。遭遇というより、志乃ちゃんがそこにいることをわかっててやってるから、天然にしてもタチがわるい!
菊池とはあとでつながりが出来るし、菊池の気持ちもあるみたいなんだけど、つき合いには警戒してしまう。私が志乃ちゃんでも簡単には打ち解けられないなあ。そういうところもリアル。
歌なら歌えるって所もいい。スキャットマンも吃音だけど(だからこそ)スキャット上手に出来るもんね。
志乃ちゃんはけっして「いい子」ではない。引っ込み思案だし、ハッキリしないし、嫉妬もする。
でも自分が何と戦ってるのか、自分の敵はなんだったのかを最後に知ることになる。
これからの志乃ちゃんの未来に明るさを感じる。ラストはオチというより終わり方にびっくりした。