2016年08月15日

この世界の片隅に(こうの史代)読み返し感想・メモ

■11月12日に公開された映画について(公開前に)書いたページはこちら。
映画「この世界の片隅に」11月12日より公開開始!: 漫画の感想ブログ ホンヨンダ
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映画の感想メモも随時追記・更新中です。
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終戦の日に「この世界の片隅に」読み返しています。
せっかくだから読み込むためにも思ったことをメモしながらよむかな。
読んで知ってほしい部分はぼかすけど、ネタバレなしではないので、何も情報を得たくないという未読の方は
原作コミックを読んでからこのメモを読むように。
っていうか私のメモなんか読まなくてもいいから、わたし・藤村阿智が好きで何度も読み返してる漫画とやらを読んでみるか〜ってのでいいから
原作漫画を読んでみてね。

基本的に、読んだことのある人と一緒に読みすすめる感じの覚書です。

9月には(個人的に)呉に行くので、呉市美術館にも行く予定です。
http://www.kure-bi.jp/
なんと「この世界の片隅に」上中下(全三巻)の原画が450点も展示されているらしい。
これは見に行かなくてはですよ。

もちろん、11月12日公開予定のアニメーション映画「この世界の片隅に」の予習でもあります。
http://konosekai.jp/

【この世界の片隅に 上巻】

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本編の主人公、「浦野すず」(以下「すずさん」)の幼少期を、戦前の広島の様子を描きながらみせてくれるオープニングから。
バケモノにさらわれて、同じくさらわれた少年と出会い、すずさんの機転でなんとか逃れるという夢のようなファンタジーな話から始まる。

すずさんがどういう子どもかということと、出合った少年・周作さんの優しさも見られるという、短い中にいろんなものが詰まったお話。
ぼーっとしているから、夢だったのかも……と思いながらも、動かせない現実の出来事ともからんでいるし、
あれはなんだったんだろう?って思う子どものころのふしぎな想い出ってあるよね。
もしかしたらあとから脳がいろんな想い出をつないで再構築しただけかもしれないけど、なんだか不思議でほわーっとなるような。
とにかく周作さんの心の動きとか、どういう人物かとかが、複雑に伝わってきてすごい。こんなに短いのに。
動じなくて、年下の女の子の前ではいっそうしっかりしたいタイプで、ちゃっかりしてて、許容範囲が広そうで優しい……
こうの史代さんが描く男の人好きなんですけど、周作さんはいちばん好き。次が「長い道」の荘介どの。

「波のうさぎ」も幼少期のエピソード。
すずさんは絵が好きで、絵が得意で、同級生の水原さんは意地悪だけどそれだけじゃなくて……
水原さんの海への思いも記憶しておきたいところ。

★本編はここから。18年12月。
「波のうさぎ」の冒頭と、おなじコマ割り、似たシチュエーション。
成長したすずさんと、なにも変わらないすずさん、変わっていく環境がおなじコマ割りだからこそ実感できる。
日常が描かれるのかとおもいきや、「すずちゃん 大事じゃ! すぐ帰り」から事件が起こり、コマ割りも「波のうさぎ」から少しずつ変化する。
でも基本的に、この二話はおなじ構成で進んでいく。だからこそ、おなじコマにあたるシーンが構図によって意味が変わってくるのを見て、気づいて震える。
「波のうさぎ」で海苔を乾かしていた場所には大根が植えられている。
「波のうさぎ」で水原さんの背中を見つけるシーン、18年12月のおなじ場所のコマでは水原さんと反対の方向へ別れて歩いていく。
すずさんは見知らぬ男からの求婚を受けて実家に帰るところなのだ。

周作さんは、結婚相手の家に持っていくにふさわしいのかわからないけど、キャラメルをお土産に持ってきているようだ。
(お土産はそれだけじゃないのかもしれない)
と言うことは周作さんはあの夢の日のことを覚えているんだとわかりますね。
対照的にすずさんは「いやかどうかもわからん人じゃったねえ……」完全に覚えてない。
求婚の相手に会うために実家に帰ったはずなのに、寒いのに、家に入らず、嫁入り衣装の着物をかぶって海をみつめるすずさん……
海にはうさぎは跳ねていただろうか。

★19年2月
すずさんと周作さんの結婚式のようす。いつもとかわらない、フツツカな娘のすずさんですが、やっぱりお嫁に行くのは不安だったんだろうな。
意地悪そうなお姉さんはとりあえず同居じゃないし、優しそうな義理の父母に一安心といった感じですかね。
夫・周作さんはどういう人かいまいちつかめない様子……

★第三回も19年2月。
冒頭にすずさんが描く、お兄ちゃんへのはがきで新しい家族や登場人物がまるごとおさらいできるのが親切!
そして結婚式の日の……夜の……周作さんとすずさんです……
周作さん好きすぎる(私が)。
眠れてないのかもしれないすずさん、「この家の嫁になった」ことを実感するように朝から家事にいそしんで……
昨日描いたお兄ちゃんへのはがきを出そうとして、新しい苗字で名前を書いて……
オチで笑えるようになってるから、オチの前の真剣なまなざしを忘れてしまいそうになるけど、二つの意味はそのままそこにあるんだと思う。
こうのさんの漫画ではよく「意味ありげな台詞で真剣な顔をしてたけど、実はこういうことでした」って言うオチへの展開があると思うけど、
オチのほうだけじゃなくてそのまま読み取れる感情もやっぱりそこにあるんだと思う。

★第四回も19年2月。
すずさんとご近所付き合い。北條の嫁として自治体の当番に初参加。
とりもって、やらかして、でもまあなんとか受け入れられた様子のすずさん……が、夫・周作さんの登場によってより強固な共感と絆を手に入れる!
って話よね!(間違ってはいないw)

★第五回19年3月。
周作さんのおねえさんが帰って来る。都会・広島から来た割に冴えない嫁のすずさんをいびって追い出したいみたいだけど、
天然ボケばかりの周りに嫌味は通用しない!! 良いツッコミ役として定着しそうです。
お裁縫などの家事シーン好きなんだよな〜。「さんさん録」とか「長い道」「ぴっぴら帳」でも暮らしの工夫シーンが好きだ。

★第六回19年3月。
広島へ里帰り。最後まで読んでからこの辺読むとなんか切ないんだよねえ、日常の描写であればあるほど……
広島に帰ってきて、改めて広島との別れを実感するすずさん。……で、オチ(笑)
帳面にスケッチするすずさんが出てくるのはここからなのね。お父さんからもらったお小遣いで買った帳面なのかな……

★第七回19年4月。
「大和」を見るすずさんと周作さん。
そんな中、姪っ子の晴美さんは「海軍の機密」をなんとかしようと奔走する……(?)

★第八回19年5月
5月は楠公飯の回!

★第九回19年5月
お義母さんをつれて国民学校へ。
お義母さんの、大変だった昔の思い出。大事だった。……大事だと思えたあのころが懐かしいというつぶやき。
掲げられたたくさんの国旗。

★第十回19年6月
お姉さんと小松菜と、建物疎開。
お姉さんの嫌味やイジワルを、すずさんはいつもとぼけているけど全部伝わってるんだと思うんだ。
でも多分すずさんはお姉さんのことが好きで、憎めないんだろうなあ。周作さんのお姉さんだし、晴美さんを育ててるお母さんだし、
悪い人でないのはわかるのだ……

★第十一回19年7月
一家総出で防空壕を作る。
周作さんとすずさんもすっかり仲良くなって……
映画の特報で観られる印象的なキスシーンはここよ。
離縁したばかりのお姉さんには目の毒ですよ!!(夫とはずいぶん前に死に別れているとはいえ)

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【この世界の片隅に 中巻】

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★第十二回19年7月。
1ページ目のお姉さんの、着物の柄www左側はいいけどその続きで見る右側の大ゴマの着物の柄は……w
ジョブチェンジって感じです(?)
お姉さんは離縁と言っても夫が嫌いになったとかでなくて、夫を亡くして夫の両親(義実家)との離縁だったのね。
つらい。そんなお姉さんのおかれた立場や気持ちを考えて、少しでも笑いのある家庭にしようと奮闘する?すずさんが
憲兵にスパイと疑われる!!!
すずさん以外には笑える展開だったみたいだけど、よく考えたら帳面を没収されてるの?
最初に描いた広島のスケッチは……? 一緒に没収? だったらそれがいちばんつらいなぁ。

★第十三回19年8月。
貴重な砂糖 守る工夫が あだとなり
物価が急激に上がることにおびえるすずさん
「いまにお砂糖が百五十円くらいになって (略) 靴下だって三足買うたら千円にもなる時代が来やせんかね…」
(笑)(笑)

★第十四回19年8月。
闇市で砂糖をショッキングな値段で購入したすずさん、ショックのあまり(?)道に迷って知らない場所へ出る。
すいか、おしろい、きれいな服、絵の具、砂糖。
闇市で出合った素敵なものへの想いがまだ残る中で迷い込んだ町は不思議な場所。
夢と現実をつなぐような女性、リンさんとはここで初めて出会うのね。
いや、本当は初めてじゃないんだけど。
昔広島にいたことがある、リンさんの、記憶に残る着物の柄。広島のイメージ。すいかの思い出……

すずさんは優しい子。ぼーっとしてるからだれも誉めてくれないけど、すずさんに優しくされた人々は確実にすずさんとつながっていく。

ところでリンさんの好きな食べ物(絵に描いて〜といわれてすずさんが描いてあげてるらしい)、
わらびもち、ハッカ糖、……そんなもんよう絵にかかん! ムツカシイわ!

★第十五回19年9月
リンさんにであってちょっとおしゃれごころに火がついた(?)すずさんはおしろいはたいて夫の忘れ物を届けに外出……
ただのお使いかと思いきや夫婦ラブラブな展開に。
忘れ物の帳面の、背表紙が破りとられてるところは要チェックです。
その帳面を持ってきてもらう周作さん、海兵さんの集団に戸惑うすずさん、
まだ嫁に来たことが覚めてしまう夢のように感じられているすずさんと
選び取った最良の現実と言い切る周作さん……
周作&すず二人きりのシーンに橋は欠かせないイメージです。
あっちとこっちをつなげる存在が橋です。

★第十六回19年9月
リンさんに約束の絵を持ってきたすずさん。くやしいぐらいハッカ糖とわらびもちがうまそうに描けてる……!!
あいすくりんはなんだかわかんないなりに描いたためになんだかわかんないものになってる!!
そしてリンさんが大事に持ってる、「ええお客さんが書いてくれんさった、名札のお手本」

すずさんご懐妊かと婦人科へいったものの、ただつきのものが遅れてるだけと言うことでしょんぼり。
そんなすずさんに、リンさんが投げかける
「お産って楽しみなもんかね?」という疑問。
子どもができる、できない、いい子どもがうまれる、できのわるい子どもがうまれる、
いろんな不安がリンさんとのやりとりで「悩むのがあほらしう」なる。

私このシーン好きです。悩むのをあほらしうしたくなるときに読み返したい。
売られた子どもであるだろうリンさんが言う
「誰でも何かが足らんぐらいでこの世界に居場所はそうそう無うなりゃせんよ すずさん」
この漫画の最大のテーマだとおもうし、すずさんをこの先何度も救っていく言葉。
すずさんはいつでも、自分の居場所がわからないという気持ちをまとって生きているように私には思えるのだ。

【2016/11/24追記】
考えてみると、すずさんはすずさんなりに落ち込んでるんだろうけど、
遊郭の女性に「妊娠かと思ったら妊娠じゃなくて落ち込む」って話をするのはすごいことだな。
リンさんたちの仕事は、妊娠したくない仕事じゃないか。
日々処理に苦労してるんだろうし…… (読み取りとしては深く考えすぎかなあ)
すずさんのことばかりみてて、リンさんの気持ちまで考えてなかったな……

★第十七回19年10月
親戚の荷物を預かる北條家。おばさんがにおわす、周作さんに「結婚しようと思った女性」が他にもいたような過去……?
ギャグでごまかしつつも、すずさんのことを「選んだ最良の現実」「選んだ」と言ってた橋の上での会話が思い出される……
りんどうの茶碗を受け取るはずだった女性はいまどこでどうしているのか。

★第十八回19年10月
破られた帳面の裏表紙と、りんどうの茶碗と、それが似合う人、ええお客さんが書いてくれた名札の見本……のつながりにきづいてしまうすずさん……
ボーっとしたすずさんの(うごきの)被害にあうのはご近所さんと晴美さんなのであった

★第十九回19年11月
ギャグでごまかされてるけど(以下略)
「夢のような」居場所に本来は自分がいるんじゃなかったのかもと思ってるのかな……
「優しくされている」「愛されてる」のももしかしたら……

★第二十回19年11月
お姉さん回(笑)
お姉さんがどんな悩みもズバッと解決!

★第二十一回19年12月
ここで水原さんの再登場ですよ。
水兵さんという立場を利用して(?)あからさまにすずを「うちのすず」扱いする水原さん。
「普通じゃのう お前ほんまに普通じゃ」
戦争の時代に誰よりも死に近い軍人である水原さんが、死を身近に感じたときに会いたいと思ったのが
すずさんだと感じた周作さん、夜にすずさんを閉め出して水原さんと二人きりで過ごすように仕向ける……
ンモウ!周作さん!

★第二十二回19年12月
水原さんのことを待っていた、そしてこんな風に二人で過ごす夜を待っていたはずのすずさんなのに、
目に入るのはあのりんどうの茶碗。
すずさんの好きな人はやっぱり……
そして水原さんの「この世界で普通で……まともで居ってくれ」という祈りの言葉もまた、すずさんを支える言葉の一つなんじゃないか。

★第二十三回20年正月
いろはがるた。
文に沿った絵が並べられている……ようでちょっとおかしいのが混じってる。読み飛ばせない!(笑)

★第二十四回20年2月
お兄ちゃんが戦死した……という悲しい話のようで、誰も信じちゃいないね。
もしかしたら死んでないかもしれない、いや、やっぱり死んだのかもしれない。
死が少しずつ隣り合わせになってくる。
「この世界の片隅に」は、戦時中を描いた漫画なのに、死が重くない。
預かりしらんところでサクッと起こる、現実と思えない死ばかりだ。たったひとつをのぞいて。
すずさんの周りにはこれから死が多く降りかかるけど、どれも現実感がない、だからこそ、そのたったひとつが重く重く感じられるのかもしれない。

★第二十五回20年2月
雪の中、りんどうのお茶碗を「受け取るはずだった人」に渡すためでかけるすずさん。
遊郭ではリンさんに会えず、かわりに「水兵さんと心中しようとして失敗、あげく熱をだして寝込んでいる女の子」と出会う。
すずさんはこの子に少し、「水原さんと添い遂げようとした自分という架空の未来」を、踏み出さなかったその先を見たのかも知れない。深読みしすぎかな。

★第二十六回20年3月
のどかな春のきざし、でも春の空には戦争が激しくなるきざし。
「来たのう… とうとう呉へも」

★第二十七回20年3月
きわめて軽微だったはずの空襲だけど、実際の現場は軽微だなんて言える雰囲気じゃないことを知るすずさんとお姉さん。
物資不足で晴美さんの入学準備グッズもなかなか揃わない……
そんな中で見る教科書への落書きは心を和ませますね!

★第二十八回20年4月
花見にやってきた北條一家、すずさんはリンさんと再会。りんどうの茶碗はちゃんとリンさんの手に渡っていた。
またひとつ、ふっと降りかかる死のこと。
リンさんから受け取る口紅。「空襲に遭うたらキレイな死体から早う片付けて貰えるそうな」
「人が死んだら(略)秘密は無かったことになる」「それはそれでゼイタクな事かも知れんよ」……
口紅と一緒にもらった、リンさんの言葉。

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【この世界の片隅に 下巻】

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下巻は、読み終えてから表紙を見るとドキッとしてしまう。
そしてあまりにも、言葉にしたらもったいない展開が続くので、たいした内容のメモはできないかもしれない。

★第二十九回20年4月
ページの上半分は、すずさんが帳面に描いたと思われる、戦争に関するメモ。
避難時に必要な持ち物、空襲を避けるための工夫、いざと言うときの備え、敵の武器についての勉強。
下半分は、頻繁に鳴る空襲警報の中で生活する人々の日常。
なんていうか、こういうのを見ていると「日常と静かに・急速に混ざっていく戦争」を感じてしまう。
私たちだって、災害への備え工夫をこういう風にやっているだろう。よその家が空襲の標的にならないようにって壁を黒く塗り始めたら、
私もそれに倣って壁を黒く塗るだろう。
日常に戦争が混ざっていたら、自分だけ「関係ないんで」と言って好きなように、いままでと同じようにはやっぱりいられないんだと思う。
お父さんの知識自慢になごむ(笑)めっちゃ理系(笑)

★第三十回20年5月
年表で見る軍艦の発達から(違)。
戦闘機の発達も空に浮かぶ。
それを作る広工廠。
きわめて軽微な空襲は続く。帰ってこないお父さん。

★第三十一回20年5月
すずさんは小まいのう。
印象的なシーンなので、なんか小さいものを見ると「○○はこまいのう」とつい口に出したくなる私。
お父さんも帰ってこない中、家を空けなくてはならない周作さんの不安。
すずさんが小まい、とわかっていてもすずさんに家を託して出かけていく。

周作さんを忘れないように、帳面に描き留める右手。帳面を袋にしまう手。
紅をくちびるに塗る右手。
「この家を守りきれるかいの?」と問われ、握られた右手で。

★第三十二回20年6月
お父ちゃんは怪我をしてるが生きて病院に入院中と判明!
お父さんを見舞って、晴美さんをつれて息子がいる下関へいくというお姉さん。
空襲の中、防空壕でなんとかやりすごしたすずさんと晴美さんだったけど。

★第三十三回20年6月
「どこで間違ったのか」
ゆらぐ「わたしの居場所」
そして今もっとも出て行きたい場所。

★第三十四回20年7月
「この家はまだ焼けない」
度重なる空襲。

★第三十五回20年7月
すずさんは失ったものを思い出したとき、周りからの「良かった」すら歪んでいると感じてしまう。
死が当たり前になりすぎた呉と、死は近くの別世界で起きている広島の七月。
「ねえすずちゃん 広島に帰っておいでや」妹のすみちゃんが語る、もうひとつの「わたしの居場所」の可能性……
すずさんの世界は失ったものを補えず、歪んでしまっている。

★第三十六回20年7月〜第三十七回20年8月
すずさんが今までぼんやりと、自分の心の中で探してた居場所。
揺らいで、失ってしまったと思った居場所は、周作さんとお姉さんにはっきりと言葉で
「居場所はここじゃ」といわれることではっきりと見える形になっていっている気がする……
同じとき、広島のあの瞬間は、ひとつの白いコマで表現されている。

★第三十八回20年8月〜第三十九回20年8月
近くて遠い広島を想うすずさん、歪んだままの世界で何にもできない反動か、強がっているように見えてつらい……
終戦の日のすずさんはいままで見せなかった気持ちと表情でうずくまる。
でも「失ったもの」がそっとそばに寄り添ってくれているみたい。

★第四十回20年9月
戦争は終わった。でも9月はやってきたし、家はまだ壊れきってないし、手紙も届くし。
生活は続く。生きている人々の。

★第四十一回20年10月
右手が描き出す、知らないはずのリンさんの物語。もしかしたら右手は知ったのかもね。
いまだ歪んだ現実のなかにいるすずさん、右手が描き出す世界は優しい世界なのかもしれない。

★第四十二回20年11月〜第四十三回20年12月
終戦で大きく変化した日常、変わらない日常は広島での出来事がじわじわ変えていく……
死んだら消えるものと、死ななければ消えないもの。
生きてる限りあり続けるなら、生きてここにいる理由になる。

★第四十四回21年1月
広島にいる、妹のすみちゃんに会いに来たすずさん。
失ったものや変わってしまったものにあふれている広島。
最初に出会った橋の上で、これからの話をする周作さん……
右手はそんな現実の合間に物語を綴りつづける。
周作さんとすずさんを引き合わせた、夢の中の出来事のような、バケモノの背中。
あのバケモノは多分……

居場所をいまようやく言葉にできたすずさん。これからも日々が続くんですね。

★最終回は「しあはせの手紙」
右手が送ってくれる手紙。
新しい、未来へ続く出会いもあって、この世界のどこにでもある片隅に色がついていく。

資料、あとがきに描かれた挿絵……久夫さん(晴美ちゃんのお兄さん)かな?が流した船に晴美さんが乗せたシロツメクサ、
新しいこどもちゃん(最終回の子)に届いている絵になってて泣ける。
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カバーをはずした表紙も見てみると面白いですよ。


いや〜 長くなった。

もう、読んだことない人にはさっぱり伝わらないメモになってると思う。
ところどころ読み取れてなくて間違いとか思い込みもあると思う。
でも、毎回読むたびに感想とか見つけることとかが違ってくるから、2016年8月15日、今日この日のメモと言うことで、
次回読み返したときに前回とどう違って見えたかを確認できていいとも思うんですよ。

とにかくなにより映画が楽しみです。
その前に9月、美術館での展示と呉の空気をめいいっぱい堪能してこようと思います。





2015年に描いた記事もあわせてどうぞ。
2000年代の「戦争と漫画」、その一部: 漫画の感想ブログ ホンヨンダ
http://honyonda.seesaa.net/article/423683949.html


映画の感想メモも随時追記・更新中です。
http://honyonda.seesaa.net/article/444225969.html
ラベル:オススメ
posted by 藤村阿智 at 21:03| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月10日

絵本 とりがいるよ(風木一人、たかしまてつを)


とりがいるよ


最近絵本を良く買う。
甥っ子が3人いるのよ!!

昔から自分のために絵本を買ったりするタイプでしたが、最近は子どもにあげるために絵本をよく買っている。

この「とりがいるよ」は、まさにとりがいる絵本。
とりのいろんな姿をみて、小さな子どもが「どういうとりか」、「なんのとりか」と考えて遊べる絵本。

もっといろんなとりを見れてもたのしかったかな〜と思うけど、子どもが飽きないちょうどいいボリュームかな。サイズもちいさめでかわいい。
1〜3歳むけということで、すこし「ちがうもの」に反応するようになったら見せてみるといいのかも?

ラベル:絵本
posted by 藤村阿智 at 17:46| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月09日

プラチナエンド1巻(原作:大場つぐみ 漫画:小畑健)感想


プラチナエンド1巻


「デスノート」「バクマン。」のコンビによる新作。
ようやく1巻を買った。品切れ長かった気がするんですけど……

中学校は卒業したけれど、生きる希望を失ってしまい死のうとする主人公・架橋明日(かけはしみらい)の元へ天使がやってきて、どこへでもいける翼とだれからも愛される矢をあげるから生きてみないかといわれる。
成り行きでもらっちゃったものの、ちからに戸惑いながら高校に進学する明日くん……

けっこうゆっくり目で、そんなに衝撃はない導入かなあ。
バクマン。の漫画内漫画にありそうな感じ?
天使のキャラもいまのところ普通と言うかとくに特徴はないかな……いやむちゃくちゃ可愛いけど

あと、小畑先生の絵でこういうシーン見られるなんてありがたや〜ってところがあって、初めて少年ジャンプ連載じゃないことを知ったり……

1巻の終わりの「引き」で、初めて「おお〜続きが気になる」って思ったかな。2巻も読みましょう。
posted by 藤村阿智 at 17:06| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月28日

ドラえもんの英語おもしろ攻略 ゼロから始める英語(キャラクター原作・藤子・F・不二雄)

最近英語を勉強したいと思ってまして。
しかも、いまだからこそ基礎の基礎から。
簡単な単語や文章から。

いま英語を使いたい場面では単語をいくつかつぶやくことで伝えようとしていますが、こんなことじゃいかんし、相手の言ってることが文章だとさっぱりわからない。まるっきり逆に思い込んじゃうこともあって危険。

で、ドラえもん好きでもあるので、ドラえもんの学習シリーズで読めばぐんぐん頭に入ってくるんじゃないかと思った次第です。

さっそく買ったのは以下の本。

ドラえもんの英語おもしろ攻略 ゼロから始める英語 (別冊ドラえもんの学習シリーズ)


結論からいうと、本当にゼロからって感じで、思った以上にやさしい内容でした。
英語が苦手と自称する私もさすがにこれくらいはわかる……いや、対処できませんけどね、このトラブルに。私も会話できないからね。


おなじみの、スネ夫の旅行自慢から始まります。スネ夫はジャイアン、しずちゃんをつれて、家族と一緒にアメリカに行っているらしい。一緒にこれないことを残念がっているようだけど、まあいつものノケモノ案件ですよ。
で、くやしがるのび太。「ぼくもアメリカに行きたい!」

しかし、ドラえもんは道具を修理に出しているので、海外旅行は不安です。
「写真を撮ってすぐに帰って来るだけ」とののび太の説得に折れて、残ってた「どこでもドア」でアメリカに出発!
アメリカで写真撮影に夢中になっていたら、トラックの荷台に乗っかってた「どこでもドア」はトラックとともに走り出しちゃった!
現在地・ダラスからニューヨークまで、トラックを追う旅が始まる……!

……というストーリーです。
ほんやくコンニャクも持ってない、英語の知識ゼロ、空も飛べず速く走れずご飯も用意できないのび太とドラえもんがダラスで路頭に迷うのです……

必死になって自分たちの困っていることを伝えようとするうちに、身振り手振りでのコミュニケーションから始まって、普段身の回りにあった英語を思い出しつつ、「なんだ英語って身近だったんだ。コミュニケーションって大事なんだ。」と言うことを実感していくつくりになってて、英語の勉強としてはやさしい内容だけど楽しみながら英語に親しみをもてます。子どものころにこの本を読んでたら、もっと英語に興味が持てたかも。

途中のコラムには、あいさつやアメリカまめ知識なんかもあります。
のび太が「アメリカ人ってなに人なの?」(いろんな人種がいる)と疑問を持つところとか、アメリカに飛び込んでしまう設定ゆえのエピソードがいいですね。
posted by 藤村阿智 at 14:51| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月21日

東京アリス(稚野鳥子)1巻〜5巻感想

稚野先生の漫画にはなんだか苦手意識があったのですが(20年以上前の印象で……)
久しぶりに新作の「月と指先の間」を読んで、なんとなく稚野先生の漫画の雰囲気に慣れたので
電子書籍版「東京アリス」1〜3巻無料ダウンロードキャンペーンを使って読んでみた。

月と指先の間(1) (KCデラックス Kiss)


まあにがてだな〜って感じは変わらないんですが、逆にいうと読まないタイプの漫画であるし、
でも流石に面白いんですよ。ベテラン先生の力量は流石です。苦手な登場人物しか出てこない、ファンタジーより遠い世界に感じる「リアル」の世界なのに、先が気になるというか。
最初は3巻までで続きを読もうと思わなかったのに、ちょっとした待ち時間の間に読み返したら続きが気になってしまって……

いま5巻まで読みました。4巻、5巻は追加で購入。

東京アリス(1) (Kissコミックス)


【あらすじ】
デザイン会社勤務の普通のOL・有栖川ふうは26歳、お買い物が大好きでお給料の大半をショッピングにあてている。金遣いが荒い。狙ってる、憧れのバッグがある。女の子としては鈍感なほうで天然だけど、どこか憎めないのか周りには可愛がられている。
そんな「ふう」のことを好きになっちゃってる上司と、3人の幼馴染の女性とのお買いものラブコメディ!

……という感じでしょうか……
上司の奥園さんが、なんでふうちゃんのことを好きになってるのかはちょっといまだにわかんないんですが、ふうちゃんは突っ走り振り回し系女子なのでさわやかなところがいいかなあ?
先日感想を描いた「私はペンで世界を変える」もそうなんですが、女子が恋にはまらずに他の好きなものを追っかけてるってのは、意外と私の好きな展開なのかもしれません。

   


しかし、まあ、26歳の女性たちが中心になってる話なので、付き合い方とかがオトナなんですよね……
すぐにカラダの関係になるというかそこからはじまるというかそれしかないというか……
ふうちゃんだけは5巻の最後でもまだきれいなままです。とはいっても昔から彼氏はけっこういたみたいなんでそういう奥手じゃなくて、最近うまくいってないって話です。

幼馴染が3人いまして、全部で4人の女性が中心に出てくるんですが、そのうちの3人
ふう(OL)、みずほ(漫画家)は円城寺(お嬢)の家に居候しているので一緒に住んでます。
桜川先生は女医さんでふうちゃんのことがむかしから好きだけど、叶わぬ恋なので男遊びに励んでいます。
円城寺はお見合い結婚が決まってるので、他のカラダの相性がいい男性やいろいろを満たしてくれる男性を探して毎日のようにいろんな男と遊んでいます。
みずほちゃんは少女漫画家でおっとりしてるんですけど、どうも金のない男にばかりひっかかり、他の女の子のようなお姫様扱いデートに縁がありません。すぐ利用されてしまうタイプです。

だれも私の周りにいないタイプだよ……
学生の頃は……みずほちゃんタイプがいたかな……
いい子だし尽くすタイプなのに、なんか変な男性につかまって、泣かされながらも尽くしちゃうわけですよ。だからみずほちゃんが一番見ててつらい。幸せにしてくれる男性とであって、存分に尽くしてちゃんと報われなさい。

ふうちゃんと奥園さんっていう、鉄板の主人公カップルは見てて安定してるから素直にドキドキできますね。
この人たちオトナなんだ……って思うと、ちょっともどかしいですけど、他の人たちの大人すぎる行動を見ていると逆に安心しますよ。バランス取れてるのかもしれない。

そんな中、ハラハラするのは、お見合い結婚も決まってて、だれよりも強く、リードして自分の好きなように人生を歩んでいるように見えていた円城寺をローラクする男があらわれちゃったところね。
安定のカップルを横目に、なんか強引でカラダだけの関係でイニシアチブを完全に男に握られてしまった危うい円城寺ちゃんがこれからどうなるのか気になって……

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続巻も読んだら感想書くと思います。
しかし、amazonで検索してるうちに最終巻(15巻)の星が平均1つ・レビュー10件なのを見てしまった……



ラベル:少女漫画 女性
posted by 藤村阿智 at 11:34| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月19日

なぁたんとご主人たま(モリタイシ)

なぁたんとご主人たま (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)


ムチムチからスレンダー、少女から大人まで女性のかわいいところを描いたらとにかく私好みになってるっていうモリタイシ先生の読みきりがkindleで販売開始ですよ!

セーラー服の少女が箱に入って捨てられていたので、とりあえず食べ物をあげてみたらなんか懐いたみたいで……っていう、お色気満載の読みきりでございます。

モリタイシ先生作品の中で史上最強にえっちなないようということで……
読みきりが配信されたときもkindleで読みました。というかそれのために、ほとんど放置してたkindleをもう一度立ち上げた。普段honto派なんで、電子書籍もだいたいhontoで読んでるんですよね……

amazonで中身も確認できますし、ちょっと読んでみて続きが気になったら購入ってのはどうですか。
100円ですよ。
カラーも収録されてるのね。これも電子書籍ならではデスネ〜。

しかし、読みきり作品がこんなに早い時期に手に入れられる・もう一度読めるようになるってのはいいですね……単行本には収録されるかわからなかったりするじゃないですか。モリ先生がこういう甘甘な漫画を今後も数本描かれたら、まとめて短編集とかになるかもしれないけど、ラジエーションハウスの巻末に収録とかはなさそうだから……
電子なら100円とかで単発の読みきり作品も発行できますね。これはいいですね。

posted by 藤村阿智 at 10:12| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月15日

私はペンで世界を変える(堂本奈央)

エッセイ含め、漫画家さんが出てくる漫画は大好物なんですが、
最近読んだ「私はペンで世界を変える」面白い。

私はペンで世界を変える(1)(プリンセス・コミックス)


私はペンで世界を変える(2)(プリンセス・コミックス)



現在二巻まで、以下続巻。(続きも購入したらここに感想かく予定)

中身はがっつり少女漫画です。
【あらすじ】
青森から転校してきた生田優子・高校二年生は、おとなしくてとくになんの印象も無い目立たない女子高生のように見えるけど、実は現役少女漫画家で期待の大型新人!
さらに、「いつか自分の漫画が映像化されたら憧れの大野君(NALISという人気アイドルグループのメンバー)に主役をやってもらう(つまり会いたい!)!最終的には結婚したい!」というこちらも超大型のドルオタというぶっとんだ少女だったんですね……

で、そのヒロイン・優子の引っ越したマンションの隣には、クラスメイトの超絶イケメン羽多野伊佐と七瀬淳(いとこ同士らしい)が住んでいて、漫画の担当編集さんもイケメンだったりして、しかも全員優子のことが好きor大切らしい……という、いわゆる逆ハーレムもの。

いや、少女漫画なんてだいたいが逆ハーレムと言うか、ヒロインの女の子はぱっとしないのにモテモテっていうのは当たり前ですよ。その中で揺れる乙女心……とか、私の好きなあの人にだけ一途なんだもん……っていう話が多いんですが、
「ペンせか」(勝手につくった略称・普通なんて呼ばれてるのか確認していない)はモテモテのヒロイン、優子ちゃんの視点があまり無いんですよ。まったく無いわけじゃないけど、優子よりも周りの男子が優子のことをどうおもってるかが描かれているというか。

しかも、周りのイケメンたちがこんなに大事にしてくれているのに、優子本人はアイドルに夢中で仕事熱心なわけです。そんな一所懸命さとか、がんばりとか、天然の良い子パワーとかがまた周りの少年たちをキュンとさせてるんですよね……ということで、ヒロインにいやらしさがなくてさわやかなのがこの漫画の良いところで、他と違って面白いところだとおもうのです!

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1巻は導入から、まず伊佐くんが優子ちゃんのことを好きになっちゃって、優子のことを好きになるのはイバラの道でドMの道だとわかっていながらもグイグイアタックする。
追って、結局淳も自分の気持ちに気が付いて、伊佐「ヌケガケ有りでいこうね」淳「おう」みたいになっちゃうわけですよ!
しょうがないよ!優子かわいいもん!一所懸命だし意外と頼れるとことかでも守ってあげたいとことか!

2巻になっても伊佐と淳は振り回されっぱなしで、沖縄いっても相手にしてもらえたような・やっぱり漫画と大野君が上のような感じでしたが、2巻が終わる頃にはちょっと優子の気持ちに変化が……? 淳にも揺れる気持ちが……!?
そして第三の男(?)が……!

2巻で、アイドルに近づきたくて漫画を描いているんだね、漫画を描きたくて漫画家になった人じゃないんだね、今のままじゃあの人には会えないよ……と、脚本を書く仕事をしている伊佐の兄から辛らつにいわれて優子の心が動くところもなかなか。今後「漫画を描く」と言うことについて深く考える描写もでたりするかな?ただの恋愛コメディで終わらない雰囲気がまた良いです。

3巻も楽しみでございます。
ちなみに私が好きなタイプは淳です。まちがいない。
インドア宅デートしたいしケーブルつないで欲しい。(自分でも出来るけどw)

しかし恋は心を騒がせたものが勝ちなんじゃないかと思いもするわけですよ……


posted by 藤村阿智 at 16:00| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月04日

げんしけん 20巻(木尾士目)

げんしけん 二代目の十一(20) (アフタヌーンKC)



げんしけんも2代目になってからのほうが長くなっちゃったんですね。

半年に一度出る新刊を楽しみにしている私です。
面白いと思うんですけど、amazonの星は低めですね……いや、もう内容を見なくてもわかりますよ。
読書メーターとかでもみんなとにかく「斑目ハーレムが長くてうんざり」って言ってるんですよ。
私好きですよ。もう斑目さん好きだから見所多くていいなあと思って(笑)

たしかに、この2巻ぐらいで日にちも2日ぐらいしかすぎてなくて、1年かけてこの2日のこと描いてるのか〜とも思います。本来ならそういうのキライなほうなんですけど、ややこしいかんじが好きなんですよ。
ちょっと自分自身が「なんでこれはいいんだろう?」ってのをちゃんと言葉に出来てなくて、やっぱり終わらないと話への感想がきちんとまとまらないかな。

とにかく斑目さんがハーレム状態だし、なんか気のせいじゃなくて、4人に本気で「私と付き合えばいいのに」って思われているようですよ。
縁がないと思ってたモテキのなか戸惑って揺れて優柔不断さを見せ付ける斑目さん!
恋しちゃってる四人がかわいい!(アンジェラだけかわいさが薄いよ!!)


でもな〜、こういう「条件違うけどどれも魅力的で選べない」っていう中から選ぶのってやっぱり後悔とか未練とか残るんじゃないかな〜と思ったり。
分岐点になるだろうし……


私としては矢島っちとハトくんのほうも気になりますね。こっちもいい感じなのに。
ってかみんなして、いろんな選択肢があってどれを選んでも怒られないなんてずるい!
保留にしとくのがそもそもダメなはずなのにね!

……とまあ漫画だけどこの先の展開をドキドキしながら読んでますよ。
早く終わらないといいかげんこの話題が長いとも思うけど、決着したらすべての関係性が変わると思うとちょっと怖くもさびしくもあり。斑目さんとかもそう思ってるかも……
posted by 藤村阿智 at 10:30| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月23日

ラジエーションハウス1巻(原作:横幕智裕 漫画:モリタイシ)

6/23 1:00現在は品切れ?のためプレミア価格ですが、重版予定とのことですので
もうすこし待てば通常価格に戻ると思います。



医療漫画はいくつか読んでます。
たくさん読んでると言いたいけど、そういえるほどじゃない……まだまだ読んでない漫画がたくさんある。

最近だとDr.コトーと医龍か。もうこの二つも結構前の漫画になってきてしまった。


「ラジエーションハウス」は、放射線科を舞台に、放射線技師の活躍を描く話。
(多分)凄腕の五十嵐唯織くんは、コミュニケーション下手のため医院を転々としつつ、放射線技師をやっている。医師免許も持っている五十嵐君は、幼馴染の甘春杏ちゃんを支えるためにあえて放射線技師の仕事を選んでる様子。
そしてとうとう、人員補充のチャンスを逃さず、杏ちゃんがいる甘春病院にもぐりこむことに成功したのだ!!だ!

モリタイシ先生はキャラクターの描写がすごくいい漫画家さんで、いままでの漫画でもいいキャラクターを生み出して動かしてきたと思うんですよ。
ラジエーションハウスも、出てきたキャラクターみんながいい感じですね。まだ1巻だからそれぞれがどういう風に五十嵐君にかかわってくるかわからないけど、コミュ下手とはいえ周りとなんとかやっていけるんじゃないでしょうか……その辺のストーリーが楽しみ。
恋のほうは、五十嵐君は応援したいけど杏ちゃんがいまのところ硬そうなので、まだまだどうなるかわかんないですね。

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ところで、この漫画は放射線科の話なので、レントゲンで診断する話が中心なんですよね。
私は個人的にはレントゲンがにがてなので……漫画ででも、中の人のことを知ったらちょっとは抵抗が減るかな?
すごく若いときに担当してくれたおじいちゃん先生が、「あなたは若いからむやみにレントゲンをとらないでおこう」って言ってくれたこととか、
検診のときにもお腹に影響のないようにエプロンかしてくれる病院とかあって、
そういう風に気を使って撮るものなんだなあと……弱いとはいえ放射線ですもんね。

上記のエピソードは京都に住んでたときの話なんですけど、東京にきたらぜんぜん配慮されなくて、
すぐレントゲンとるし検診もざっくりしててなんだか不安なのよ〜。
胃のX線とかもすごくつらいし……

1巻の後半に、女性が乳がん疑いでマンモを受けるエピソードがあるのですが、
マンモは30代だと見えにくいって話を聞いてるので、若い人が何人も受けてるのにちょっと違和感が……
超音波検査とか触診のあとの精密検査で受けたりするのかな。
私はまだマンモやったことないです。最近他の国ではマンモを40代でやるのも誤診が増えるっていうことで取りやめてるところがあるみたいですね。

オマケ漫画ではそんなマンモ(のおっぱいはさむやつ)を……、……、ぜひ!1巻を買って読んでみてください!


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他の医療漫画についての感想は以下。
医龍12巻
http://honyonda.seesaa.net/article/24920642.html
医龍13巻
http://honyonda.seesaa.net/article/37362964.html
医龍17巻
http://honyonda.seesaa.net/article/114635906.html
あれ〜医龍って最後まで感想書いてないのか……適当だな〜私

Dr.コトー診療所21巻
http://honyonda.seesaa.net/article/37108927.html
もう9年以上前か。書いてある感想読んでも内容が思い出せないな……
(その後の引越しで手放してしまったので手元にない)
posted by 藤村阿智 at 01:28| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月21日

さびしすぎて〜に行きましたレポ(永田カビ)

タイトル、最初はちゃんと書いたんですけど、広告とかサイト規約の関連で
この文字列はアウトの可能性があるので、タイトルぼかします。うーん。

正式タイトルは画像で確認してください。

あ〜せいねんむけの内容じゃないけどせいねんむけでもあるのかもな……直接的な描写はけっこうあります。
どうやって紹介したもんかなやむな。
「そこじゃない」部分が良かったし、そこじゃない話なので。




「なにか」につまづいてしまって、うまく人とコミュニケーションがとれなくなった主人公。
(所属を失った、社会人にすんなりなりきれなかったのがキッカケのひとつとしてあげられているかも)
コンプレックスや精神的な痛みを癒す・次のステップに行くには「抱きしめられる」ことが必要だと思いいたって、そういうサービスを利用してみた、けど……というお話。

pixivでそのいちばん盛り上がるあたりは読んでいた。単行本ではそこにいたるまでの葛藤や、前提が補足されている感じ。もともと期待していたけど、やはり前提や葛藤の中に読むべきところが多いと思うので、心になかなか解決できない寂しさや、停滞したものを感じる人は読んでみるといいと思う。


私自身のことを言えば、近頃共感が薄れていた。
共感と言うのは気持ちいいもので、自分だけじゃない、自分も認められる、誰かと自分が同一っていうすごい感覚なのです。
そんな共感が失われるのはストレスになるのよ。
共感とは決して他を排除することではなくて、自分以外からの支えのひとつだと思っている。

このところ立て続けに「これはこういうもんだ」という決め付けを見かけては「私はそうじゃない」という、共感できない断定に晒されて、もっと「私はこうだ、こうなんじゃないか」っていう話を聞きたかったんだよ……


「居心地が悪い時って 劣等感から自分をよく見せようとしている時か 自分の本心をわかってない時」(29P)
「私 自分から全然大事にされてない……!!」(55P)
「自分から『大した事ない』扱いされる」(55P)


自分ではがんばって、もうダメだ、休もうって思ったのに回りからは「(いままでが)休んでるんだと思ってた」って言われちゃうとか……つらいけどなんか思いあたる
とにかく自分と周りの考えてることや欲しいもの与えるものがちがいすぎて「??」とはてなが飛んでる状態の「前提部分」……

ほかにもいろいろあるんですが、とにかくこうやって「ああ、そう、そうなんだよね〜」と思いながら、自分のもやもやを言語化してくれている本を読むのはとてもやすらぐのです。

そして性へのコンプレックスをみつめて表題どおりの行動の結果、たどり着いた思いもなんかすがすがしいですね。欲しいものが少しずつわかってきたのかなって思わせるラストがまた良いのです。
posted by 藤村阿智 at 11:46| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月10日

文具少女ののの1巻(星屑七号)

文具少女ののの(1) (ヤングガンガンコミックス)



文房具(折れないシャーペン)を愛してしまった少女・若射のの は、イケメン先輩からの告白も断わってしまうほど。
あまりにも無碍に断わったために、納得の行かない先輩は悪の心に取り付かれ、ののに襲い掛かるが……
ののが愛するシャーペン「ロクロック」は特別なシャーペンだった!!
文具愛を力に変えて、折れない心で敵と戦う文具少女が誕生したのであった!!


文具が折れる描写などは文具好きとしては見ててつらいものがあるんだけど……
でも1巻読み終える頃にはだんだん面白くなってきたかな? 女の子キャラがみんなかわいいですね。


【ついでに他の文房具漫画についてもかく】
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私自身が文房具好きで、漫画も好きで、描いてたりもするので、文房具が出てくる漫画と聞けば積極的に読んでます。
さいきん「文具天国」読み返したらすごく面白かったです。なかなか描けないですよ、こういうのは……


文具店を切り盛りする小学生を描いた「夕焼けロケットペンシル」もいいですよ。
仕入れたり、売ったり、維持することの大変さにも触れられていて、コメディの中にきちんとリアルを混ぜてくるあたりがマジメに描かれてる漫画だな〜と思います。文具店描写も好き。近所にあったら行きたい!


文房具がいろいろ出てきて楽しいという意味では、漫画家について描いた漫画もいいですよね。
だいたい、その作者さんがどういう道具を使って描いているのかわかるからいいですね。
そういえば漫画家漫画で「フルデジタルの漫画家さんキャラ」っていまのところいないんじゃない?
漫画家としての、漫画を描く生活を描いた漫画じゃなくて、別のテーマの漫画に出てくる「職業・漫画家」だったら、フルデジタルとかありうるかも。

漫画家以外に文房具使う職業ってあるのかな? おなじ作家でも小説家は文房具つかわなそう(使ったとしたらペン・万年筆と原稿用紙?カッターとか使わないんじゃないか)。
学校の先生とか。あとはやっぱ事務仕事の人かな……

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私も文房具の漫画を2005年から描いてます。「文具少女ののの」みたいに迫力があるわけでも、女の子が可愛いわけでもない地味目な漫画ですがお気に入りです。
新作かかなくちゃなあ〜。っていうか、俄然描きたい気持ちになってきた……

便乗して私が描いてる文房具漫画を宣伝
まかせて!文具仮面
ラベル:文房具
posted by 藤村阿智 at 10:43| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月09日

家族が片づけられない(井上能理子)

家族が片づけられない (コミックエッセイの森)



婚活、子育て、親子関係その他いろんなエッセイマンガを読んでいますが、
こちらも好きなジャンル「片付け」。

私の興味はいつも、「誰かが当たり前にできることは全員ができることとは限らないと言うことに気づく」ということ。
私はいろいろできない子どもで、いまでもできない大人なんだけど、このズレはどこから来ているのか。
他の「できる人」はなぜ、できないことを「信じられない」と言って責めてくるのか。
いろんな視点から、できる、できない、あるある、ありえない、という意見を見たいわけです。

「家族が片づけられない」は、主人公=作者さんは「片づけができる人」。
いままで気づかなかったけど、家族は「片づけができない人たち」だった。いや、昔はできていたはずなのに?

主人公は仕事が忙しかったりして体調と心のバランスをくずし、療養のため一人暮らしから実家に帰ることに決めたけど、帰ってみたら実家がごみ屋敷になっていた……こんな場所じゃ休めない、と片付ける!家族は協力してくれないどころかどんどん散らかす!
家族と戦いながら家を掃除してきれいにしていく主人公!

前半は、何故こうなったかと言う分析や、家族へのグチ、具体的な掃除方法などまさに「お掃除エッセイ」という感じで綴られていく。どういう汚れがなにで落とせるのか、どのへんに汚れがたまりやすいのかなど、掃除のノウハウ的な情報を求めてる人にもありがたいネタが書かれてて読み応えがある。

でも、私が「このエッセイいいなあ」とより思ったのは後半から。

家が片付かない、ちらかしてしまうのはただのズボラや性格の問題だけではない。
この家族が住んでいる家は病んでしまっているのではないか。
そして、主人公が本当にくつろげる部屋。「理想の部屋」とはなんだろう。
部屋とは、私(住む人)の心の中そのものなのでは? という発見。
掃除はできても、居心地のいい部屋を作れない自分に気づく。
ちらかっていても、モノが多くても、居心地のいい部屋は作れるということ。

表面だけの、「部屋を片付けると気持ちが良い」「掃除をしないと汚い」ということではない、もう一歩進んだ「自分が住みたい、居心地がいい部屋」とは何かを考えるきっかけになるんじゃないか。
この本の終わりは、「家族にも片付けてもらえるようにする」という着地じゃなくて、自分が部屋と家族とどういう風にかかわって行くのか、答えを見つけたいという希望だと思う。
posted by 藤村阿智 at 14:31| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月01日

100回お見合いしたヲタ女子の出産記(肉子)

100回お見合いしたヲタ女子の出産記



婚活漫画を二冊出している、肉子さんの最新エッセイ。
最初の子どもを授かるところから、二人目出産まで。

レビューの評価は低めですが……
わたしは期待通り楽しめました。発売がわかってから、読むの楽しみだったんですよ(*´ω`*)

レビューの人たちが期待した内容じゃなかったというのもわかります。
確かに出産の話が詳しく、これからの人には参考になるように書かれているというわけではない。
私の場合、エッセイマンガは大体「描いてる人が好き」っていう理由で買うからなあ……
おなじテーマで、どんなに役に立つ内容でも、面白くなかったり描いている人が好きになれなかったら読んでも面白くないし。逆に参考にしないために、私の行動に悪影響を及ぼすかもしれない(笑)

本の内容をちらっと。
肉子さんがお見合いでであって結婚した相手と、実際の結婚生活はどうなのかという話。
なかなか自然に子どもができなくて、病院で不妊治療の結果赤ちゃんを授かり、出産した話。
いままでの本に載せきらなかった婚活ネタなど。

妊娠して、プレママ学級みたいなところで無駄にペアを作らされたりして
「お見合いパーティーとおなじ!」ってなるところとか、面白いけど恐怖!
私は人と無差別にかかわるのが嫌いなので、そんな「同時期に妊娠している」程度の共通点の人と
積極的にかかわりたくないんだけど……
肉子さんもそんな感じに「しんどい!」って思いながらなんとかこなしてる姿に涙。

エッセイ漫画、私が読んでいて面白いな〜と思うのは、こういう「その人が体験して何を思ったか」という視点ですよ。
だってママ学級でペアを組むのが別に苦痛じゃないとか、特にトピックじゃない「みんなやってる」ことだと思ってエッセイに描かれなかったりするでしょ。でも知らない世界ですよ。「そんなのやるのか〜」って。

ハウツー本を買って、自分の体験しか描いてなかったりしたらちょっと「読むところないなあ」って思うかもしれないけど、エッセイ漫画だもんね。


夫婦揃ってオタクだからこそ、子どもにオタクアイテムを禁止したくなる気持ちも描かれていたり。
確かに自分たちは好きで楽しんでいるけど、人(とくに子ども)には悪影響なんじゃないかって心配になりますよね……


お見合いエッセイのほうの感想も書いてます。
100回お見合いしたヲタ女子の婚活記(肉子)

あれ、2巻の感想書いてなかったか。


 

posted by 藤村阿智 at 11:43| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月13日

進撃の巨人19巻 (諌山創) 感想

進撃の巨人19巻読んだ。

進撃の巨人(19) (週刊少年マガジンコミックス)



ここ数巻は物語がどんどん動いていい感じですね。
とはいえ、思い返せばけっこうテンポがいい漫画なのかな……
リアルタイムで単行本を集めてると「なかなか進まないな〜」と思いますが。

19巻では、謎だったマルコの最後についてが描写されたのと、
巨人側の人(3人)がどういう気持ちで「巨人襲来の日」をすごしていたのか、
かつての仲間たちが殺しあうことについての葛藤がありましたね。

積み重ねた日々と、本来の立場のふたつが揺さぶりをかけてくる。
ここまで見守ってきた読者も一緒につらい気持ちになるなあ。

アクション的にも「どうなっちゃったの?これからどうなるの?」って感じで
20巻も楽しみです……

最大の謎「なんで壁内人類は死を願われているのか」がまだまだわからないですね。
少しずつ語られはじめたけど……
ラベル:少年漫画
posted by 藤村阿智 at 17:10| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月18日

バクマン。(小畑健・大場つぐみ)全20巻【完結】+映画版感想

※映画も観たので感想を記事の最後に付け加えます。
大いにネタバレアリなのでネタバレを見たくない方は見ないでください。


すでに完結している「バクマン。」実写映画化の予定もありますね。
再読中なのでついでに感想と覚書を書いておきます。
ネタバレあり

漫画家について描いた漫画をコラムとして特集しようと思ったんですが、
バクマンはリアルタイムで単行本を購入して全巻持ってるけど、
読み返したことがないな……と思ってこの機会に読み返そうかと。

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)
バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

1巻は主人公のサイコー(真城最高)とシュージン(高木秋人)の二人が出会い、漫画を描く目標を同じくするところまで。
恋のために漫画家を目指すってのはいいですね。それぐらいはっちゃけてて、中学生らしい勢いがあるほうがいい。あと、漫画周りのネタが殺伐としてるので、恋愛周りぐらいは思い切ったフィクションがあったほうが読んでるほうも安心しますよね……

読み返してみると、フェミニストの人ならガンガン突っ込みそうなせりふがすごい出てくるなあ。
ヒロイン・亜豆美保ちゃんに対するサイコーとシュージンの会話もすごいし、基本的に「女で頭が良すぎてそつないやつは好かれない」って評価なのがすごい……デスノもそうだったもんね、一番かっこよかったナオミさんは退場しちゃったし。
見吉ちゃん(1巻の終盤で出てくる)は好きなんだけど、彼女も「オバカだけど尽くすタイプのかわいいやつ」って感じだからなあ。バクマンで好きな女性キャラは漫画家の……ってまだ先のほうで出てくるキャラでございます。
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バクマン。 (2) (ジャンプ・コミックス)
バクマン。 (2) (ジャンプ・コミックス)

2巻。男キャラだと新妻エイジが好きだからがっつり出てきてうれしい。
見吉ちゃんもいいよね〜出てくると明るくなって。
かわりに漫画界隈は殺伐としている。アンケート重視だという現実や、漫画を描く難しさとか……
でも意外と「すげー努力してがんばった → 面白いって言われる漫画が描けた」って感じでぼかされちゃってて、具体的にどういう漫画が描かれてるかってのがわからないからちょっと残念。もちろんそういう「スゲー面白い漫画」とか、「天才が描いた漫画」とかを作品中にだすのが難しいのもわかるし、無くていいんだけど、せっかくだからソコの頭脳戦もリアルに楽しみたいきもちになっちゃう。

バクマンシリーズで一番楽しみなのは、毎回挟み込まれてる「大場ネーム → 小畑ネーム → 完成!」って言うおまけページ。あれが何より、一番漫画を描く上で参考になると思う。
大場ネームの単調でシンプルな構図(これが生きるストーリーもあるだろうけど)から、少年誌向けの迫力と動きがあって、魅力的でわかりやすい画面にどうやって変化させるのかがわかる。
「そうか〜そのコマは一つにまとめちゃっていいんだ」とか……
漫画家志望でバクマンを読んでる人がいたら、何よりも「原稿ができるまで」を熟読するといいと思います。
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バクマン。 3 (ジャンプコミックス)
バクマン。 3 (ジャンプコミックス)

表紙が新妻エイジ。いいですね。
この巻のみどころは、やっぱり新妻エイジと亜城木夢叶が出会うところかな。
天然天才キャラの新妻エイジと、大部分を計算でこなすタイプの亜城木夢叶だけど、漫画を好きな想いが一緒だからライバルでありつつも仲良くなっていく。
33歳でまだデビューできてない中井さん、だれよりもアツい福田くんも登場するね。
ヒロインのミホちゃんも声優として一歩を踏み出すし、少しずつ前に進んでいる。
進んでいるといえばシュージンと見吉の関係も……

「バクマン。」はテンポがいいから、ほとんどよりみちをしないでどんどん前に進んでいく感じ。
1巻の始まったころからは、実際の時間も1年経ってしまった。

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バクマン。 4 (ジャンプコミックス)
バクマン。 4 (ジャンプコミックス)

連載への長い道のり。
早く連載を始めたくてあせるサイコーとシュージン、じっくり育てたいと思っている担当の服部さん。
まあ大人と子どもの時間間隔はだいぶ違うからねえ。

漫画のほうは新人のライバルが出揃ってきた!
1巻の感想で言ってる、好きな女性キャラである蒼樹紅先生も登場です。
男性キャラだと、漫画家っぽくないおしゃれ(?)な福田さんもいいですよね〜。
たまにいますねこういう漫画家さん……少ないと思うけど……
エイジはあいかわらず、だけど、初登場あたりに比べるととがったところが無くなって、素直ないい子に。確かにこのタイプは自分が納得すると理解と対応が早い気がする。
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バクマン。 5 (ジャンプコミックス)
バクマン。 5 (ジャンプコミックス)

5巻。いやなタイミングで担当が替わるという、初連載だったら不安だろうなあ〜という状況に。
さらにアシスタントが三人来る。やっぱ週刊誌の連載だと3人いるか……
蒼樹先生と中井さんのコンビで描いた読みきりが好評にもかかわらず連載にならないということで、二人の仲も終了しそうになるところは燃えますね。なんとか持ち直したし、これからも信頼を深めていくけど……中井さん……かわいそうな男よ。
恋愛方面では、サイコーと亜豆ちゃんの二人にも波乱が。まあ波乱と言ってもお互いの信じて待ってる部分が揺らいだりとかそういう暗い話じゃないので安心して読めますね……結局ラブラブだし。
5巻で「オッ」と思ったのは、チーフアシスタントの小河さんが「デッサンの狂いが無いか確かめてるか」って聞くところかな。連載作家で絵がうまいというサイコーですら、「苦手な向きの顔はウラから描いてる」って言うところ。細かいところに注目するとより面白いです。
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バクマン。 6 (ジャンプコミックス)
バクマン。 6 (ジャンプコミックス)

6巻。もうずっとオツカレな目をしてたサイコーがとうとうぶっ倒れる。
入院して手術するハメになってもまだ描くという。
まあ漫画だから、そこで描いちゃう主人公でいいんだけど、体験談だったらまずい話なわけで……
ソコにフィクションらしく「仲間の漫画家たちによるボイコット」っていう非現実が飛び込んでくるところがウマイ。

ロング休載は免れたけど、せっかく再開した連載漫画の順位がやばくて連載終了の危機……
果たして会議の行方は!?というところで6巻は終わって、7巻へ強烈な引きです。

個人的見所は、担当:ミウラさんが珍しく(?)担当として頼りになったシーン。
アンケートの順位が下ってきて、何とかテコいれを……と、原作のシュージンが漫画のネタや方向性を決めるにあたってファンレターを参考にし始める。
ファンが喜んでくれる展開やキャラクターの登場ってのは、誰もが考えるところだとは思うけど。
そのネームをミウラさんはバッサリ「ダメだ!」「一番やっちゃいけないことだ」って切るところがカッコイイ。
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バクマン。 7 (ジャンプコミックス)
バクマン。 7 (ジャンプコミックス)

7巻は表紙からして、ふたりとも頭を抱え込んじゃってるモンね。苦難の7巻です。
まあ6巻で引いた連載会議の結果、「偽探偵TRAP」は連載終了(打ち切り)になったわけです。
そして次の連載の準備。けっこう慎重になるサイコー&シュージンに比べて、ガンガン行きたい担当のミウラさん。
前回けっこうかっこよかったのに、7巻では「ミウラはハズレ」って扱いに……(笑)
すったもんだとけんかしたり離れワザをしたりして、なんとか自分たちの描きたい漫画を貫こうとする二人。

恋愛関連の話も盛り上がってきていいですね。シュージンの周りは女子が多いなあ〜
蒼樹先生もぐんぐん可愛さが増していくところ。中学の同級生・岩瀬さんも再登場でど〜なることやら、って終わりです。
蒼樹さんと岩瀬さんのやりとりなんか、蒼樹先生のほうが年上なだけはあって余裕の分析ですね。

それにしてもヒロインのはずの亜豆ちゃんは出てこないねえ……設定が設定だから仕方ないし6巻で一杯出て宝いいのかな。
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バクマン。 8 (ジャンプコミックス)
バクマン。 8 (ジャンプコミックス)

いい構図の表紙ですね〜。
8巻は断然、シュージンをめぐる恋模様が見所。
蒼樹紅先生もすっかり可愛くなっちゃって……この辺からの姿を知ってると、最初のほうの蒼樹さんも可愛く見えてしかたない。

漫画のほうはギャグマンガで連載ネームを作ってるけど、苦手もあってなかなか進まないようす。
ツンツンで気に入らないキャラとして1巻に出てた才女・岩瀬さんも返り咲いてにぎやかに……
8巻序盤で(シュージンにとって)意味不明な言動をする岩瀬さんをみて蒼樹さんが「子供だこの子……」って呆れるところが好きです。デスノートの「ダメだこいつ……早くなんとかしないと」に似た雰囲気がある(笑)
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バクマン。 9 (ジャンプコミックス)
バクマン。 9 (ジャンプコミックス)

この辺面白くてガンガン読んじゃうので、感想をおいてけぼりにしそうになる。
感想を書くのが遅れて溜まっちゃうと、感想を書かなくなっちゃうから、続きを読みたいきもちは我慢して9巻の感想を。

ようやく難産だったギャグの連載が開始。評判は悪くないけど、やっぱり本来得意なものじゃないかんじ……
亜城木夢叶が連載に苦しむ様子の合間に、見吉家の父親とのエピソードが出たり、ひそかに生まれつつあるライバル・静河流の様子がはさまれたり、シュージンが結婚したり。

結局苦手な内容を無理して描いてたギャグマンガは終了させる意向で。
まあ作家が終わらせたくても終わらせられないってのはあるでしょうね……
だからって失踪したらもう二度と漫画かけないだろうし(少なくともその雑誌では……)。

影で暗躍してた服部さんも改めて協力することになって、追い風が吹いている!……と言えるのかな?

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バクマン。 10 (ジャンプコミックス)
バクマン。 10 (ジャンプコミックス)

ほぼ1巻分かけて、次の連載のためのネームを描き続けてる。
バクマンはテンポのよさはいいところですよね。ムダにエピソードにページ数を割かないところ。

見所は……やっぱ最後の方の連載会議かなあ。会議で話あってるだけだけど熱い展開に(笑)
ベタだとは思うけど……

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バクマン。 11 (ジャンプコミックス)
バクマン。 11 (ジャンプコミックス)

やっぱりまとめて四冊読んじゃったら感想書くのがしんどくなってきた。
読んだのは昨日……とかでも、そのあと続きの巻を読んだら古いほうからどんどん読んでたときの気持ちとか感想を忘れてしまうなあ。
11巻はいままでのちからを終結させた連載漫画「PCP」が開始、ほかの連載陣と直接対決が始まる。

岩瀬さんがライバルとしてガンガン打ち込んでくるところがいいな。
一瞬岩瀬さんと新妻さんのカップルが出来上がるのかとヒヤヒヤするところとかも(笑)
しかし岩瀬さんはもてなさそうですね……美人なのにね……

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バクマン。 12 (ジャンプコミックス)
バクマン。 12 (ジャンプコミックス)

12巻。
表紙は平丸さん。平丸さん好きだな〜。
「PCP」ドラマCD化に当たってとうとう亜豆ちゃんが亜城木作品のヒロインを演じることに。
しかし「PCP」はアニメにならなそう……
アシスタントの白鳥くんも活躍し始める。ほかのアシスタント二人のほうが漫画家目指してたのに、絵が描ければそれだけでいい……って言ってた白鳥君が一番に漫画家への道を進み始める(笑)

白鳥君の絵の描き方にサイコーが驚くところいいなあ。下書きをどれくらいの細かさまで描くかって人によりますよね。確かにあっさり下書きを描ければ描画スピードは上がりそう。
この先、絵の話広がったっけなあ?もっと絵を描く話も読みたかったんだけど。やっぱりストーリーの話が中心なんだよね。漫画の見せ方とかのほうももうちょっと掘り下げて欲しい。

実際のマンガの名台詞を使って盛り上げるところもありますね。
こういうところが面白いところ……で問題なところでもあると思うけど。
現実世界とリンクしてるように見せるところはずるい。面白くなってるけどずるい。

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バクマン。 13 (ジャンプコミックス)
バクマン。 13 (ジャンプコミックス)

13巻はいいですね〜。
シュージンは白鳥君にかまけっぷり……に見えて、見吉ちゃん・サイコーが不安になってくるところとか。
見吉ちゃんぐんぐん可愛くなってくるね。結婚して魅力が増したねえ……
よく考えたらメインの女性キャラには恋人がいて、読者が「俺の嫁」とか言う隙がないね(笑)
見吉はシュージンの嫁(ほんとうにw)で亜豆はサイコー(人名)の嫁って感じで。

恋愛縛りの読みきり合戦が決まって、全員が恋愛モード。
平丸さん&蒼樹さんのカップル好きだな〜。よかった中井さんに押し取られなくて。

最後には脅威の新人が登場して……続きは次巻!
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バクマン。 14 (ジャンプコミックス)
バクマン。 14 (ジャンプコミックス)

13巻の最後で出てきた新人・七峰くんが注目されてから落ちぶれるまでをこの14巻1冊で描いている。
たくさんの漫画好きが力をあわせて作ったら面白い漫画が書けそうってのはわかるけど、
だったら編集部が原作・原案として作った漫画を絵のうまい人が作画すればいいってことに
なってしまうけど、そうはならないってことはやっぱりある程度少人数で作ったほうが面白い漫画が出来るんだろうね……

14巻では中井さんがスーパーアシスタントとして復活、すがすがしいクズっぷりを見せ付けてくれます。
そんな殺伐とした中で蒼樹さん&平丸さんはほのぼのさせてくれますねえ……
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バクマン。 15 (ジャンプコミックス)
バクマン。 15 (ジャンプコミックス)

15巻。14巻に引き続き七峰君。
担当の小杉さんが出してくるのが辞職願じゃなくて異動願なところがなんかぬるい(どうせ自分で出すなら辞表じゃないのか)
そして七峰君の完全敗北、正直あっさり勝てたのですっきりはしてるけど「やった!」って感じにあまりならずに流しちゃったかな? その後の平丸さんのかっこよさで全部持っていかれてるというか。
「平丸さんかっこいい! 七峰?そんなのもあったっけね……」ぐらいのテンションに……

サイコーが小学校の同級会に行くところはなかなか。小粒なエピソードだけどこういうのいいよね。

そして連載は順調だけど、世の中では漫画のマネをするやつが現れて、作者の精神状態がピンチに。
デスノートとかもまねは出来ないまでも、いろいろ言われてたもんねえ。
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バクマン。 16 (ジャンプコミックス)
バクマン。 16 (ジャンプコミックス)

バクマンはリアルタイムで新刊を買ってたけど、読み返すのは今回が初めてなんだな。
覚えてるけどこの先がどうだったか覚えてないっていう状態がずっと続いてる……

16巻はとうとう新妻エイジ作の人気漫画「CROW」が終了。
読者としては理想の終わらせ方なんじゃ。作者じゃなくてさ。
だって面白かった漫画が最高に面白くなって終わるんでしょ。名作になりそう。

「バクマン」世界のジャンプにも、福田組以外の作家がいる(ONEPIECEとかも連載してるみたいだし)らしいけど、CROWがずっと1位、ほかの架空漫画家も上位をキープとか言われると、
ONEPIECEとかどれぐらいの順位なんだろ……ってついつい思ってしまう。
時間は2016年になってるからね。その頃に終わってるのかもしれないけど。

急に昔の漫画家が面白い話を持ち込んでくるようになって編集部があわただしくなるところで
次巻への引き。黒幕はあの人なんだろうか……
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バクマン。 17 (ジャンプコミックス)
バクマン。 17 (ジャンプコミックス)

17巻。表紙には亜豆ちゃんいるけど、ここのところ本編ではちっとも出てこない。
見吉ちゃんも出てきてはいるけどにぎやかし程度の活躍に……
恋愛方面が作品に影響するのは平丸さんと中井さんぐらいだな(笑)
岩瀬さんはよくも悪くも影響ナシというか……

七峰君が復活して、この世を金と知恵で動かそうとするけど結局うまく行かないかんじ。
こういうところはバクマンも王道だなあと思う。悪いことというか、読者が「そんなのやだなあ」と思う人は成功しないというところ。
七峰君はほんと、ジャンプにこだわらずに他紙でそれをやるか、自分の雑誌を立ち上げれば勝利できると思うんだけど……亜城木夢叶に勝つどころか、ジャンプをつぶせるかもしれないしねえ。

お世話になった編集長が去り、サイコー&シュージンが本当にヒットさせられそうな漫画を思いついたところで、18巻へ続く!
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バクマン。 18 (ジャンプコミックス)
バクマン。 18 (ジャンプコミックス)

18巻。18巻はなかなか盛りだくさんの1冊でした。
読みきり対決から、掲載誌移動までやってのけて連載開始。
ここまで読んで思うけど、漫画のつくりとしてはこの「バクマン」に描いてあるとおり、やっぱり王道なんだよね。読者の「予想を裏切る」ようなエピソードが語られつつ、読者の「期待を裏切らない」展開というか。
つまり「いままでに観たことが無い!」と思わせながら、実は「いつもの安心できるパターン」にはめているという。

この巻の見どころはやっぱり平丸さんと蒼樹さんだよね。
平丸さんのプロポーズ大作戦は、「ドラえもん」ののび太的な状態になっちゃったけど、逆に女性が読んでもなんだかほっこりして「こんな風に結婚申し込まれてみたい」って感じなんじゃないでしょうか。
「壁ドン」ばかりじゃないですよドキドキイベントは。
普通に考えると「平丸さんは蒼樹さんのどこが好きかって聞かれて『顔!』とか言ってたし、蒼樹さんが年を取ったらどうなるんだろう?」って心配しちゃうところだけど、蒼樹さんが才女でいい人だから、結局年を重ねても魅力がかわらずに、平丸さんもずっとドキドキメロメロのまんまなんじゃないだろーかという安心感がありますね……
どっちかというとサイコー&亜豆のほうが心配(笑)
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バクマン。 19 (ジャンプコミックス)
バクマン。 19 (ジャンプコミックス)

バクマン。 20 (ジャンプコミックス)
バクマン。 20 (ジャンプコミックス)

バクマン最終巻に向けたエピソードが続く、19巻と最終巻の20巻。

最初から「漫画のアニメ化、恋人の亜豆がヒロインの声を演じる」ってのが目標で、それをめざして20巻近く活動してきたわけですよ。ライバルたちとしのぎを削ったのもすべてそのため。人気を取るのもすべてそのため……

19巻では、人気を取るために考えて書いた漫画がとうとうアニメになる話が来る。
しかし、アニメに必要な「連載が続く」という条件を考えずに書いてしまったので、納得の行く終わらせ方をすると、1年程度で物語が終了してしまうという問題が発生。
……先ほどの「アニメ化だけのために」がんばってきてた姿勢と、ここはブレてるんだよなあ。
ココに来て突然「納得の行く形で連載を終了し、後に残る名作として完成させたい」ってのが、今までと別人の願いみたいに感じる。
ここまで何度も違う漫画を連載してきて、あせることもないって言う心境になったということなのかなあ……
一応「亜豆にとっても(傑作のヒロインという)代表作になってほしい」という理由付けみたいなことはあるけど。

連載が短いけどアニメ化することも落ち着いて、あとはヒロインに亜豆が選ばれれば大団円なんだけど、
ここでもひと波乱。
なんと漫画の作画担当と人気声優の純愛が発覚☆
コネなんじゃねーのかって言う疑惑がもちろん持ち上がる。

亜豆ちゃんががんばったり、周囲にも「熱い思いに答えたい」って言ういい人がいたからハッピーエンドにはなったけど、実際だったら「なんか変なうわさたっちゃったな。どんなにうまくても今後亜城木と亜豆の組み合わせは避けたほうがいいな」ってなりそうです……

この最後の展開も、王道らしい読者の期待にそった展開でよかったです。
そこに「川口たろうの日記」っていうアイテムを絡めてきたところが「なるほどな〜」って感じ。
真城さん亜豆さんおめでとうございます。
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【全20巻総括】

読み返そうと思ったきっかけは、とある人が
「高校生の息子が『バクマン。』のことを、絶対感動する、すごくいい漫画だから読んで……と薦めてきた」
と言っていたから。40代のかーちゃんに、高校生の息子が、すごくいい漫画だ、読めというほど。
私も1巻から20巻まで全部読んだけど、そんなに良かったっけ? っていうか高校生が感動するような内容だっけ? とおもって読み返して、やっぱり「わかるけどなんかイヤだなあ」とちょっと思ってしまった。
イヤだなあとおもった気持ちは具体的に語らなくても、多分高校生も、自分が大人になるか、いろんな漫画や映画や小説に触れていけば、だんだんバクマンの順位も下っていくんじゃないかって思うから大丈夫だと思うんだけど……



いえ、漫画としては良くできてるし、面白いと思いますよ。
キャラクターも魅力的。
まさに、大場つぐみさんはこのバクマンに出てくる高木(シュージン)タイプの原作者なんだと思う。
バクマンで繰り返しいわれてた、「天才じゃなくて計算するタイプ」。(天才でもあると思うけど……)
だからノンフィクション(実際にある風景、実在する人物、本当のシステム)をうまくフィクションにいれてくることで、フィクションだけでは作り出せない面白さを作ってるんですよね。
これが同じ内容でも、架空の世界で行われている架空の少年漫画で連載するための漫画家バトルとして描かれていたら、ここまで面白く感じないと思うんですよ。
そこまで計算して、ノンフィクションを混ぜ込んで「事実は小説より奇なり」ってのに価値を見出すタイプ(つまり一般の人だけど……)に受ける内容を計算していると。

あと、キャラクターを本当は大事にしていない感じが出ていて……
バクマンでも途中に「一話完結じゃない一話完結」みたいな説明が出てくるけど、「以前に張った伏線のような設定を引っ張ってくる」って言うのを、実際にバクマンの中で使っているわけですよ。
いざとなったらその設定やエピソードは使わなくて終わっちゃっても「回収されていない伏線(謎)」にならない程度のエピソードを用意しておいて、後で持ってきて「あのときの話がここで生きてるのね」って思わせるのがうまいというか。

私が「この人はキャラクターを大事にしてるな〜」って思う漫画では、同じように昔のエピソードが再び語られたりつながったりするけれど、計算じゃなくて「このキャラクターのエピソードを読者に伝えたい」って言う気持ちが伝わってきたりするんだけど、バクマンではそこも計算されているように感じてしまう。
静河くんのその後なんてムリに書かなくてもいいんですよ!
「神の視点」で物語を見てきた読者(=神)に、キャラクターのその後をとりあえず全部報告してる感じに見えてしまうというか……「あの人どうなったの、存在をわすれてるの」ってつっこまれたくないダケなんだろうかとかんぐってしまう。

考えればジャンプの漫画はそういう感じの漫画が多いかもしれない……
ワンピースで「あのときのあれがここで!」って思ってもキャラクターを大事にしてるな〜って思うことが無いというか……

同じ作者だから比べてもいいかな?ということで、
デスノートと比べると、デスノートは上記の「キャラクターを大事にしている風」が見えなくて、逆にいさぎよいところがいい。「あの人のその後」を計算で描いたり掘り起こすよりは、主人公周りの事件を決着させたらほかは言及しなくてもいいんじゃないか。
ノンフィクションをあまり混ぜ込んでこないところもいいと思う。設定をしっかりさせたフィクションのルールでどれだけやれるかっていうのはわかりやすいし、漫画というジャンルで真っ向勝負って感じがかっこいいよね。

バクマンも、「努力・友情・勝利」を描いた漫画だとは思うんだけど、努力はいまいち見えてこない感じだったかな。なんかいつの間にかスキルがあがってて、本人たちも描写的にも「天才じゃない、計算する努力タイプ」ってなってるけど、結局は天才だったのかな……って思っちゃう。
まあ、ジャンプの漫画家には天才じゃないとなれないですよ。

ジャンプに絞ってたからしょうがないけど、他にもいろんな漫画家がいて、いろんな漫画家という仕事の進め方があるって言うことも読者に伝わればよかったかな……


ぐちぐち文句ばかり言ってますけど、漫画家を描く漫画の中でも異色で面白いものだったと思います。
少年漫画らしい王道の物語で、この漫画こそが何度も作中で言われていた「王道の邪道」作品だということが一番のみどころなのです!


--------------------------------------------------2015/11/18追記

【映画版「バクマン。」感想こちらから。】ネタバレアリ。

映画版、実写のバクマン。も観てきました。

大胆な改変もいくつかあったけど、原作そのまんまなところもあってなかなか面白かったです。
特に中盤まで、映像の見せ方なども「おお〜こんな映像やストーリー、映画で観られるのか」と思うほど新鮮で面白かったです。
その分、後半でいまいち失速した感じがあるかも。
つまりピークは真城&高木がエイジとまんが対決(心理描写としての対決)するシーンがクライマックスに感じたということ。


大胆な改変はまず、亜豆ちゃんと真城の関係が変わっていること、新妻エイジの性格。

亜豆ちゃんは真城と両想いってのは変わってないのですが、亜豆ちゃんがぐんぐん立場をUPさせて引き離して行き、とうとう真城は置いていかれてしまう。かわいそう。夢に向かってがんばってたのに、カラダを壊して、落ち込んでるときに振られるっていう最悪パターンですよ。もともと、原作でも序盤はおとなしめで印象が薄めのヒロインだったのに、映画ではさらに嫌な女の子になってしまってるような……いっそ両想いでもなくするか、そもそも亜豆ちゃんを出さないってのもアリだったかもなあ。

新妻さんは、原作では「天才だけど漫画への愛ゆえに他の漫画家へのリスペクトもハンパなく、行動的で素直な性格、先の道を開拓していく先駆者」としてカリスマがあったとおもうんだけど、映画では天才にはちがいないけど嫌なやつっていうキャラになってて、まあ2時間の映画でわかりやすいライバルにするためにはそうするしかないと思うけど、エイジファンの私としてはさびしかったな。

細かいところでは、私がバクマン登場キャラで数少ない好きなキャラ・見吉ちゃんと、女流漫画家の蒼樹さんは出てこなかった。まあしょうがない。かわりに中井さんが遅咲きの漫画家に昇格していた。

ラストの展開は急な感じだったかな。あんなにがんばってアンケート1位をゲットしたけど、その後人気は急落、数ヶ月もしたら打ち切りで連載なしの無職状態に。高校も卒業だし、どうすっぺ……新作描こ!ってところで終わってるんですよ。
病院抜け出して、肝臓の数値が悪い状態を押してまでがんばったのにね……

あと、高木がなあ。原作担当はすることなさそう、な感じ? アシスタントがいない状態で描いてたから、高木がアシスタントのようなことをやらされてたし、原作は片手間にアシスタントも出来るのか〜みたいな印象に。
高木も真城も、とくになにかをやってるふうでもないのにぐんぐん上達して「短期間でうまくなってる……!」ってなるのは、原作どおりです(笑)


よかったところは、平丸先生のキャラと、服部編集担当、福田さん、中井さん、編集長のキャラ。
キャラは総じてよかったですね。川口たろうもすごくよかった。
平丸先生は原作のようなかわいさがなくて、とにかく金にうるさい芸術家みたいだったけど、それでいいんです。平丸先生のシーンは劇場で笑いが起こってた。
服部さんも、原作のようなわかりやすい熱さはないものの、マジメでキャラが立っててすごいと思った。


おまけ。藤子不二雄ファンとしては、細かい見所がいっぱいありましたね。
集英社で、ジャンプの編集部だとはっきり言っているのに、なぜか編集部内とか個人の持ち物にドラえもんやオバQ、パーマンなどがたっくさん。
「キャベツの炒め物」「毒ヘビは急がない」「オレの恋人はまんがや!」など、トキワ荘&まんが道ネタもいろいろ。

映画バクマンを観たらまんが道が読み返したくなって、いま1巻から読み返しています……
(まあ、バクマンは今年読み返したばかりだもんね。)
posted by 藤村阿智 at 10:40| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月02日

3月のライオン11巻(羽海野チカ)

3月のライオン 11 (ジェッツコミックス)



10巻はなかなかの盛り上がりだったので、その続きである11巻は発売されてさっそく買いました。

10巻で登場して読者の敵意を一身にあつめたであろう、三姉妹の父親は11巻でなんとか撃退。
よかったよかった。
ちゃんとあかりさんががんばったところも良かったですね……
こういう展開でありがちな、「でもちょっとはいいところもある人間だった」とか、「いい人間のいい行いでわるいやつの心が動かされて、この後いい方向へいきそうだ」って言うごまかしではなくて、
「やっぱりダメな人間はダメだから遠ざけるしかない」って方を描いてくれたのは良かった。
最近そちらのほうが流行っているので、あちこちでみる意見・対処のような気もするけど、三月のライオンほどの注目作でやってくれることの意義はあると思う。
漫画なんだから救いも欲しいとはおもうけどね。

零くんの恋というか未来設計、周りがなんとなくぼやかして先に進めなくしちゃうのはかわいそう
(;;)
たまにはこういう恋で、猪突猛進する展開があってもいいじゃんかよ(;;)
もう家族になっちゃえよ……
もたもたしてると、羽海野先生の絶望的展開手腕が発揮されて、ひなちゃんが(最近とんと出てこない)後藤にかっさらわれるかもしんないと思って不安じゃないか……出てこないから逆に怖いよ……


posted by 藤村阿智 at 11:41| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月20日

メシマズ……というか料理が苦手なキャラがいる漫画

おととい、昨日あたりに立て続けに「メシマズ」の話題を読みまして。
いわゆる「メシマズ」は「料理が苦手な人」ということにとどまらず、
「独自解釈で良かれと思ってアレンジを加える人、思い込みが激しく、しかも出来上がりに違和感を持たない人」
って感じなんでしょうか……賞味期限が切れている、どう考えても合わない食材をあわせる、ほかと違うことはイイコトだと思ってるというか。

私もおおざっぱで、レシピ見ないし目分量ですが、冒険しないし最小限の味付けしかしないので、メシマズにはならずにすんでいるようです(……と思いたい)。


もちろん漫画にもキョーレツなメシマズ系キャラがいますね。
でも考えてみたけど意外と思い出せないもので、とりあえず読んだことある漫画のキャラで思い出せるものを紹介してみます。

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【独創的すぎる奇跡の料理タイプ】
エスパー魔美 1 (藤子・F・不二雄大全集)


まずはやっぱり私の大好きな「エスパー魔美」から、主人公の魔美くんを。
「缶詰をあける」以外の手順がある食事は、インスタントラーメンですら不味く出来上がるほどの腕前。
魔美くんの作ったサンドイッチを見た高畑さんの感想、「ギハハハ、巨大!」「にぎやかだね。なにが入ってるの?」って食べ物に向けた言葉じゃない!!(笑)
魔美くんのざんねんなところは、そんな腕前なのに料理が好きだということ、「料理は女性がやるもの」というこだわりをなぜか持っちゃってるところ、レシピどおりにやって失敗してもレシピがおかしいと言い張るところ、かな……
でも途中のエピソードでは、料理が爆発した挙句に味見で自分がぶっ倒れて、高畑さんのおいしいご飯に涙したり、お母さんの言うレシピをきちんと守って「食べられる料理」を作ろうと少しずつ成長してるから、大人になったころには上手に出来るようになるんじゃないかな。


【自分の好きなものは皆好きだと思うのかなタイプ】
ハチミツとクローバー 1 (クイーンズコミックスDIGITAL)


ハチクロはね、……はぐちゃんと山田さんがね。両方すごくてね。
ミントのおにぎりとかね。フルーツがご飯に絡まる系とかね。隠し味のチョコが勝ってる系とかね。
本人たちは結構「あらおいしい!」みたいな反応なのもすごいね。生半可なメシマズじゃないですよ。
きっと結構食べられる味なんだろうなあとは思う。パインラーメンみたいな? 男子が食わず嫌いをしているだけでさ!

【何が入ってるか不安系】
ドラえもん(13) (てんとう虫コミックス)


こちらもチャレンジ精神がありすぎて不安になる系。有名な「ジャイアンシチュー」の回が収録されているのは13巻でございます。
ジャイアンは曲を作る、歌う、リサイタルを開催する、ファッションモデルやアーティストにも興味のある、好奇心旺盛なタイプですが、料理にも食材ですらない「セミのぬけがら」を入れてきたり、すでに完成している食べ物「大福」「しおから」もつっこむというすごい独創性です。まさにオリジナル。
英語で煮込み料理の総称だという「シチュー」を料理名に入れてくるあたり、これが「ごった煮」であることを自覚しているとしか思えない。
ジャイアンは各方面でオリジナリティが「サービスを受ける人々」に違和感を与えてしまっていますが、本人の「おもてなしの心」は間違いなく存在している……と思うのですがいかが?
全部自分でやろうとせずに、それぞれをプロに任せる支配人のような仕事に向いてそう。旅館やホテルなど。

ジャイアンさんの魅力については別サイトでさんざん語っています。
よろしければソチラも見てみてください。
ジャイアン心の友の会
http://www.blackstrawberry.net/g/g.html


【荒っぽささえなおせばなんとか……】
パーマン 1 (藤子・F・不二雄大全集)


藤子F先生作品には料理が苦手? なキャラがいっぱいいるんですな……
ちなみに出木杉くんは料理が上手で、のび太も「くやしいけどうまい」って言うぐらいですよ。
「パーマン」ではパー子が料理苦手キャラです。炊飯器でご飯を炊いても炭のかたまりに。なんつうか料理がちからまかせ。
でも正直パー子はまだ小学生だし、普段はスーパーアイドルとして多忙な毎日を送ってるし、「うちではお手伝いさんがやってくれますの」なんてふざけたように言ってるけど実際そうだろうし……

藤子先生の漫画は、女の子キャラたちがみんな魅力的で、なのにステロタイプな「女の子はこうあるべき、男から見た・大人からみた良い女の子はこれ」っていう押さえつけの表現は無いんですよ。たとえそういう風に言ってくる状況やキャラがいても、それは脇役たちで、メインの少年少女はそんなものには反発してのびのびやりたいと思ってる。
藤子F先生自身、3人の娘さんに囲まれて、女の子の生き生きとした姿を間近で見ていたんだろうなあと思う。


いでじゅう!(10) (少年サンデーコミックス)


「いでじゅう!」はヒロインの桃里ちゃんは料理が上手なタイプ。
10巻の夏合宿の回、女子バレー部と一緒にご飯を作るエピソードで、バレー部の後輩・山咲ちゃんが見事なメシマズっぷりを見せてくれる。具のはみ出した餃子。シャクッとなぞのアクセントがたまらない茹でじゃがいもっていう、微妙なラインで料理が出来ない人がやりがちな失敗を出してくるところがさすがモリタイシ先生!
山咲ちゃんも多分、私とおなじで「まいっか」で生きてるタイプ!

【ちょっとずれてるだけタイプ】
イタズラなKiss (1) (集英社文庫―コミック版)


主人公・琴子も、ドジでダメな女の子だから、当然のように料理が上手じゃない。
でもさ、「お弁当にネギ」「卵焼きにカラ」「焦げてる」程度はもうたいした問題じゃないよ。
あとちょっとのテクニックが必要なだけ。
素敵な専業主婦のお義母さんもついててくれるし、お父さんは板前だし、入江くんも料理上手だし。
そんな中で自分も料理したい、上手になりたいってがんばるところがえらいですよねえ。
イタkissで好きなシーンは、入江くんに「コーヒー入れるのだけはコイツ(琴子)がうまいから」ってぽそっといわれるところですよ。読んでて「琴子!よかったね!入江くんいい男だね!」って琴子の友達かのようにはしゃいでしまう。


【味覚が合わないタイプ】
うる星やつら〔新装版〕(1) (少年サンデーコミックス)


ラムちゃんが作る料理も、食べられない系ですね。
しかしこれはなんつうか……宇宙の食い物だから……
ラムちゃんの故郷はとにかく味付けが辛いらしい。あと見た目はとがってるね。
ラムちゃん自身は地球の食べ物も問題なく食べられるみたいだし(辛さを足してるときもあるけど)
まさか自分の星の食べ物が地球人に合わないとは想像できないんだろう。
だからそのうち改善するんじゃないか。
テンちゃんには「うちらの食べ物を地球の生き物にあげちゃダメだっちゃ」みたいに叱ってるのにね(笑)多分味以外は地球人にも害がない食べ物……をチョイスしているんだろう。うん。



【ある意味忘れられない食べ物】
ピューと吹く!ジャガー (3) (ジャンプ・コミックス)


それはピューと吹く!ジャガー3巻に登場する食べ物だ……
ピヨ彦の実家から巨大なマツタケが送られてきた……興奮するいつもの仲間たち……
めったに手にはいらない代物、高級食材、ありがたいもの、マツタケ……
ジャガーさんが自信マンマンに「一番マツタケを堪能できる料理を作る」と言い切った……
ワクワクテカテカして待つ一同の下に運ばれてきたマツタケ料理とは……

ガム……
巨大なガム……


確かにマツタケを堪能することが出来たのであった……


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結局藤子ネタが多くなってしまった。
同時に「うまそうなご飯を作るキャラが出る漫画(グルメ漫画以外で)」と言うのを書こうと思ってたけど
いまいち面白くならなそうなのでやめときます。
posted by 藤村阿智 at 13:06| コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月11日

進撃の巨人17巻(諌山創)

進撃の巨人(17) (講談社コミックス)
進撃の巨人(17) (講談社コミックス)

ネタバレがど〜してもいやな人は以下スルーで。たいしたこと書かないけど。

17巻も16巻に引き続き面白い展開。
いままで引っ張ってた数々のなぞが明らかになっていくからすっきりするのかな。

ラストでも、ここ最近放置されてた別件の問題に言及してて、次巻にも期待しちゃう。
私だけなのかもしれないけど、実はキャラの顔の区別がいまだにちゃんとできてなくて、
「あれ?この人とこの人同じ人なのかな……?」って不安になっちゃう。
最後のメガネの人って……でもちょっと確認したけどめがねも若干違うような……うーん……
って感じです!!

しかし、人気漫画だから長々と語ってもおかしくない過去のエピソードも、すっきり簡潔に語りますね。
こういうのは、サイドストーリーが外伝で充実しているからでしょうか。
私は原作以外はアニメしか見ていないので答え合わせ出来ませんが、原作のテンポが適度に速いのは好きですよ。

進撃の巨人、「擬音が面白い……」とひそかに注目してるんですが、
17巻で一番気に入ったのはウソ予告の「ポチョム」っていう音です。
ポチョムって。諌山氏は若いはずなのに、なんか擬音が懐かしい感じ。
ラベル:少年漫画
posted by 藤村阿智 at 14:34| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月06日

2000年代の「戦争と漫画」、その一部

2000年代にも第二次世界大戦の漫画はいろいろ出ている。
全部読めてるわけじゃないから、私が読んだ一部の漫画しか紹介できないけど、
少しずつ思うところと漫画の紹介を書こうと思う。

昭和の時代には戦争を描いた漫画はたくさんあった。
悲惨な状況を体験した作者自らが描いているものも多く、戦争がどうやって人を殺したかを伝えていた。
私も子どもの頃からそういう漫画、絵本、小説、映画……たくさん観てきた。
戦争は怖い。私たちのこの世界と違う。違う世界の違う場所でこんなことが今でも起こっていて、私たちの日常もある日突然戦争に変わるかもしれない。
という恐怖を持ったまま大人になった気がする。

大人になってから初めて出会った戦争関連の漫画はこれだ。
夕凪の街 桜の国 (双葉文庫)
夕凪の街 桜の国 (双葉文庫)

2003年の作品。
オビに「賞をとった漫画」と書いてあったし、私は漫画好きで漫画を描いたりもしているので、そんないい漫画なら読んでおかなくちゃ。と思って購入した。

いままで読んでいた戦争、広島、原爆……を扱った漫画とはだいぶ違っていた。
そもそも舞台が戦後、昭和三十年である。
特にショックだったのは33ページ(文庫は持ってなくて、ページ数が違うかも)の、何も絵がないページ(皆実さんの主観だということがあらわされている)に描かれた台詞。

「嬉しい?」「十年経ったけど 原爆を落とした人はわたしを見て 「やった!またひとり殺せた」 とちゃんと思うてくれとる?」

いままでアメリカ(国)が日本(国)に原爆を落としたんだと、どこかで思っていたのだけれど、
この「夕凪の街 桜の国」の皆実さんの台詞には、ひとが、ひとに。だれかが、わたしに。 どうしてだれが、なんでわたしが? という想いが、憎いとか悲しいとかそういう次元と別のところに存在しているんだなあと……私は初めて思い至ったわけで……
主人公の皆実さんはたくさんの身内を「あの日」失ったけど、戦争や爆弾を憎む様子を見せるでもなく、身内を思って悲しむ姿を見せるわけでもなく、十年間戸惑って、理不尽に死んだ人と、偶然に生きている自分との違いもわからないまま暮らしていたんだと。

後半の「桜の国」のほうではほとんど原爆も広島も影をひそめ、薄まって、当事者にすらなにが因果や影響を残しているのかもう判断もつかないのに、いまだぼんやりと……時々見える影をそばに置いたまま暮らしていく不思議さとちょっとした戸惑いと、
あとは間違いなくあの日からも同じ世界が続いているということ。

「夕凪の街」と「桜の国」は、後半のほうで同じ場所を旭さんが尋ねたり、過去の風景が重なるようだったりする直接的な描写もあるけれど、同じコマ運びだったり、なぞるような描写に、時を越えたリンクを感じられる仕掛けもあって、漫画としてもテクニックがすごいんですよ……

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あとかたの街(1)
あとかたの街(1)

2015年現在も連載中。4巻まで出ている。(私は今日の時点でまだ3巻までしか読んでいない)
この次に紹介する「凍りの掌」が先にあって、そちらはシベリア抑留を体験された、作者:おざわゆきさんのお父さんのことを描いた本。
続いて、こちら「あとかたの街」は、名古屋の空襲を体験されたお母さんの話をベースに描かれている。

いままでいろんな「戦争の本」を見てきたけど、シベリア抑留・名古屋空襲まではしらなかった。
シベリア抑留も「なんかシベリアに行って仕事してた人たちがいたらしい」ともんやりイメージしただけで、ソコの気候や待遇、それどころか具体的に「人が」そこにいたことすらあやふやだった……

「あとかたの街」では、お母様の少女時代、戦時中の抑圧された生活の中でもささやかな楽しみを胸に、つらい中も工夫して生活を続けている様子が描かれている。

戦時中の暮らしや「ソコにいた人」は感じられるけど、どこか「私とは違う」人のように読んでしまってる気がする。この感じ方の違いは不思議だ。

4巻も近々購入予定。また感想が変わってくるかもしれない。

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新装版 凍りの掌 シベリア抑留記 (KCデラックス BE LOVE)
新装版 凍りの掌 シベリア抑留記 (KCデラックス BE LOVE)

「あとかたの街」と同じく、おざわゆきさんの漫画。

私は最初、この「凍りの掌」を同人誌で読んだ。続巻が出るたび購入して、その後小池書院から出た商業版も購入した。上記リンクは先月発売されたばかりの、講談社から出ている新装版だけど、さすがに三種類買うのはためらわれて、私は同人誌版と小池書院版だけを持っている。

これも最初に読んだとき衝撃を受けた。
私にとっておざわゆきさんは築地グルメ漫画の人でおなじみで、私も参加している同人誌即売会コミティアで見かける、カワイイ絵のレポートとおいしそうなご飯の絵が印象的な作家さんだったから、
まさかその人のお父さんがシベリア抑留でこんな壮絶な体験をしてきているとは。

また、お父さんが語り部に合うというか、本人がどんどん前に出るタイプでなく、強い思いや気持ちをもちろん心に秘めつつも、冷静に「その場にいた」事実を語っている様子が、読者に「伝えるちから」を大きくしているんだと思う。
あのときどこにでもいた普通の青年が、戦争に巻き込まれていく描写は、読者と同じ目線でその場を伝えていく。作者のおざわさんのちからだとおもう。
つらい中でも、たべものをたべたり、ソビエトの人と交流したり、花が咲いたりっていう救いが出てくるのもいい。

「あとかたの街」「凍りの掌」両方に共通して思うのは、
この体験をした方々が今も生きて暮らしているということ。
戦後70年? なにも遠い話じゃない。 私たちだって70年後に、もしかしたら何かを語っているかもしれないじゃないか。
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フイチン再見! 1 (ビッグコミックス)
フイチン再見! 1 (ビッグコミックス)

こちらも2015年現在連載中。
女流漫画家・上田トシコさんは、2008年に90歳で亡くなった。第二次世界大戦の戦時中を駆け抜けた人だ。

この漫画も私にとってはあたらしい目線をくれる漫画。
トシコがお嬢様なのである。
いままで戦時中の話といえば、物資がない〜情報はない〜抑圧されててぜいたくは敵〜隣組〜みたいなイメージ一辺倒だったけど、トシコはお金持ちの家庭に生まれて、なに不自由ない上品な暮らしを送っていたわけです。
開戦の一報を銀座のパーラーでランチにホットケーキをほおばりながら聞いたり、
おニューの真っ赤なコートをきこんで顰蹙を買ったり、パーマを禁止されたり、終戦のやけくそでケーキを食べようとしたりする。そもそも、戦争中に一番生活に関係ない「芸術」に一所懸命な若者たち。
いままでの「戦時中の暮らし」とイメージが違う……!

でもこの感じは親近感がより強くて、「あれ? 戦時中でもおいしいもの食べるのが楽しみって人もいたり、おしゃれをつらぬこうとしたり、お金に困ってなかったりするんだな?」って思うと、いろんな人がいる中に私もいるという感じになれる。

あとは当時のハルピンのひとたちね。トシコ一家がいろんな人に好かれて、また、一家が好きだった外国の人たちや町並みや文化が確かにあって、戦争はあったけど支えあえる友人もいたということ。

それぞれの巻の感想も書いてます。
フイチン再見!(村上もとか)1巻〜5巻: 漫画の感想ブログ ホンヨンダ
http://honyonda.seesaa.net/article/413881232.html

私は上田トシコさんの「フイチンさん」も読んでいて、あちらはハルピンのおぼっちゃんが、金持ちを鼻にかけた性格だったのに使用人の娘「フイチン」と出会ってからどんどんいい子になっていく話なんですよ。トシコさんのハルピンへの思いや、楽しかった記憶がふんだんに詰め込まれている感じ。

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この世界の片隅に(前編) (アクションコミックス)
この世界の片隅に(前編) (アクションコミックス)

この世界の片隅に(後編) (アクションコミックス)
この世界の片隅に(後編) (アクションコミックス)

2007年〜2009年連載作品。前出の「夕凪の街 桜の国」とおなじく、こうの史代さんの漫画。

お恥ずかしい話、私は「この世界の片隅に」を読むまで、戦時中に人間が生きて暮らしてたことを知らなかったんですよ。さすがにそれは言い過ぎかもしれないけど、それぐらい曇った目で「戦時中」を見ていた。
戦争の間につらい思いをした人たちって言う、私には関係のない、住む世界が違う、別人がいたと思っていたんじゃないか。


主人公の「すず」さんたちは、普通に平凡に毎日暮らしていて、働いたり、さぼったり、仲良くしたりけんかしたり。強くて、弱くて、叫ばず、主張しすぎず、絵が好きで、フロをわかしてご飯を準備して節約して工夫してその分楽しんで……
今現在の私たちとなにも変わらない、ひとりの人間とその隣にあった戦争とっていう話で……
戦争が終わった後も生活は続いていく。

私だって、この2015年を普通にいろいろしながら生きているけど、未来に振り返ってみれば
「あのときはもう、戦争が始まってたね」
といわれるのかもしれないと思うと、すずさんがあんなに普通の女の子だってことが怖くなってくる。
普通の人が生きていたということは、普通の私もそこに居るかもしれないからだ。

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「この世界の片隅に」はそんなわけで私にとって特別な漫画。
「すずさんかわいい、萌え〜」で十分なので読んだことない人はぜひ読んでみてください。
漫画の表現としてもいろんな仕掛けや挑戦がふんだんにあって、何度読んでも楽しい。

私はこないだ、「全部読んだ人には、最初の方で出てくるバケモノの正体がわかる――」という話を聞いて、
「え!!! (「冬の記憶」というエピソードの)バケモノの正体とか、考えたことなかった! もちろんわかってない!!」ということで読み返したんですよ。
うわ〜見逃してた。気づかなかった。はっきり明言してるわけでもないし、そもそも「冬の記憶」自体がファンタジーな存在で、「あれはなんだったんだろうなあ」という子どものころの夢のような雰囲気がいいところなんだけど、そういう解釈もほんわかしていいですね。
「すずさんなりの解釈による創作」だったとしても、それはそれでいろいろ深い。改めてキュンとしてしまった。

【この世界の片隅に アニメ映画を応援しています】

2016年秋公開予定とのこと。
特報映像が好評なので見てみてください。
漫画は知ってて、映画化を知らなかった人は今日から公開を心待ちにしつつ一緒に応援してください。
漫画も知らない人はぜひ読んでみてください。



映画「この世界の片隅に」公式サイト
http://www.konosekai.jp/


映画をきっかけに、現在出てる文庫版だけじゃなくて
前の「上中下」3巻も復刊したらいいのに。全部読んでから3巻の表紙を改めてみたときの
ゾクッとする感じ、すごく良かったから。

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戦争のことを考えたとき、とくに近頃思うのは、たくさんの人が自分と同じようにこの世界で生きているということ。
少なくとも私は、相手の名前を呼びながら殺すことは出来そうにない。
ならばみんなが少しずつ、知らない人を知っていけばいいんじゃないか。

紛争が起こってるその場所でも、誰かが楽しいことをしたり、明日の準備をしたり、行事をこなしたりしていると知れば、恨みでもない限り死んで欲しいとは思えない。

第二次世界大戦のとき、アメリカの兵士は、日本人が怖くて同じ人間だと思えなかった……という話を読んだ。言葉も通じないし、肌の色もちがうし、なんと自爆する。理解できない。殺さないとこっちがやられると思った……という話で、確かに、自分と違う生き物を殺すのであればためらいも少なくなるだろうと思った。
戦争はそうやって「あのかたまりは自分とは違う」と人を誘導するところから始まるんじゃないか。


私は知らない土地のニュースを見ると、その地域の気候や人口密度、ストリートビューや航空写真を積極的に見るようにしている。
異国の商店街や看板、バイクにのった人、黒いごみ袋、手入れされた庭、飼われてる動物……などなど見ていると同じ世界でそれぞれの「暮らし」があることを実感できる。そして普段異国の住人を、国の名前だけで認識していることがよくわかる。

今後、もし私たちに敵が出来るとしたら、戦わせたい人たちは相手ひとりひとりの暮らしを伝えず、名前を奪って、別の名前でひとからげにしてくるだろう。
私が人を殺さない方法はひとりひとりの顔と名前を思い浮かべることで、死なないためには、それまでに出来るだけ多くの人に「私はこの世界の片隅に生きている」と伝えることなんじゃないだろうか。
posted by 藤村阿智 at 14:55| コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月27日

フイチン再見!(村上もとか)1巻〜5巻

【5巻の感想を追記しました:2015/7/27】

フイチン再見! 1 (ビッグコミックス)
フイチン再見! 1 (ビッグコミックス)

とっくに書いたと思ってたのに、まだ感想書いてなかった。
いま、4巻発売をきっかけに再読中です。

女流漫画家・上田としこさんの人生を描いたマンガ。すごい。
上田としこさんといえば、私には「フイチンさん」でおなじみのひと。
母が「フイチンさん」が大好きで、復刻版を購入して、私も読みました。
その後大人になってから、アニメビデオが発売されたことを知って、それを制作会社から通販で購入して、母と一緒に見ました。
でもそういうきっかけがなかったら、私の世代には上田としこ先生は、まったく身近じゃない作家かもしれない。
上田トシコ - Wikipedia

長生きなさって、2008年に90歳でなくなったときはニュースで聞いて亡くなってしまったことに驚きました。
いつまでもフイチンさんみたくお元気でいらっしゃるような気がして。

この「フイチン再見!」は、そんな上田としこ先生の生涯を描くマンガになると思います。
もちろん、作品以外の先生についての情報はほとんどなかったので、こうやってマンガで読めることはすごいことだと思ってます。

以下マンガの感想。

フイチン再見! 1 (ビッグコミックス)
フイチン再見! 1 (ビッグコミックス)

1巻は、第一話で上田としこ先生が漫画家として活躍されているシーンから。
もう第一線の人気作家として、多忙な毎日を過ごされ、一緒に住む家族たちの生活を支えています。
そこに、なくなったはずの父親の幻が現れる。会話しているうちに、思い出されるのは幼い日から今日までのこと……

ハルピンでの生活が描かれる1巻。私、そういえばハルピンのことなにもしらないな。だから、西洋のような町並みがあったということ、そこに日本人、中国人、ロシア人、ユダヤ人とさまざまな人が住んでいたこと。なにもかも興味深いです。日本人で、お嬢様である「としこ」も、楽しみも悩みもあるのです。

1巻の後半では東京へ戻ってくる。学校は日本の学校へ通うため。兄の友人からの紹介で、イラストレーターで漫画家の松本かつぢ先生の弟子になったものの、先生はなにも教えてくれないで、もって行く絵やマンガにマルバツをつけるだけ。
それも6ヶ月続けていたら、先生からイラストの仕事をいただく。

周りの女学生は、どんなお相手のところへ嫁ぐのか・どういうお嫁さんになるのかを考えているのに、としこはひとり自立するためにマンガの道を目指す。

フイチン再見! 2 (ビッグコミックス)
フイチン再見! 2 (ビッグコミックス)

2巻。先生の紹介もあって、新聞に連載を始める。
父の反対も押し切って、マンガをもっと上手に書けるように、東京で絵の練習を続ける。
日本は戦争の時代に。絵を描く、マンガを描く、それももしかしたら危ういかもしれない時代。
友人の紹介で出会った近藤日出造氏には、「お嬢さんすぎて世間離れしているから、漫画家に向いていない」といわれてしまう。
働いてもっと世間を知ったほうがいい。とのアドバイスを受け、仕事を探すものの、女性の給料はとしこが父から送ってもらってる仕送りの3分の1しかないことを初めて知り愕然とする……

今まで読んだ戦争時代の話と、あまりにかけ離れた生活をするとしこの姿が逆に目新しい。
こうの史代さんの「この世界の片隅に」でも、戦時中といえども楽しみをもって暮らしたり、節約の中に贅沢を感じていたりと、「戦争は戦うだけじゃなく、生活のとなりに戦争があるんだ」ということを改めて感じたものですが、この「フイチン再見!」でのとしこの姿は、贅沢ができないはずだった時代に、多くの民衆より一段上の裕福な生活を送る人がいたこと、そしてそんな人ですら戦争の渦に巻き込まれ、世間の目を感じながら生き、思うがままには生きられなかったということを表していると思う。

・真珠湾攻撃・開戦の一報を、としこが銀座のパーラーで久しぶりのホットケーキをランチにほおばりながら知るシーン
・ハルピンでの生活中に雑誌や文化などで触れたアメリカの大きさ・強さを、裕福でインテリだからこそ肌で感じている
というところは、いままでに私が読んだ戦時中を描いた作品の中には出てこなかった、新しい目線だと思った。

フイチン再見! 3 (ビッグコミックス)
フイチン再見! 3 (ビッグコミックス)

3巻。画学生仲間の弦田氏に肖像画を描いてもらい、これまでの仲間と学んだ3年間を想いながらハルピンへ「帰国」するとしこ。
過激なハンガーストライキを経て、働くことを父に認めてもらったとしこは満州鉄道に勤め始める。
巨大な、国家そのもののような鉄道会社。
そこで知る、勤労女性の待遇の低さや、周りの人間とどうかかわっていくかの経験。
貧困と罪が身近に転がってるのを知る。
このマンガ、出てくる風景もきれいで人々も服装もみないいんですが、食べ物がおいしそうでいいですよね〜。としこがいいものを食べてるってのもあるかも(笑)
女性の環境を向上させるために立ち上がったとしこと、それを良く思わない人たちとの対立もある。
3巻はマンガをほぼ描かない。一回だけ、ポスターをマンガのように描いて、自分が人に与えられるマンガとは何かに気づくシーンは、この先重要になってきそう。


フイチン再見! 4 (ビッグコミックス)
フイチン再見! 4 (ビッグコミックス)

4巻。滅私奉公にいそしむとしこは、志願して慰問列車に乗り込み、鉄道沿線の各所をめぐる。
そこでも、であった少年たちの心をつかんだのはとしこが描くマンガ!
1945年8月を迎えて、日本は戦争に負ける。「だが、満州の日本人の”戦争”はここからはじまったのだ――」という裏表紙の言葉通り、あっという間に変わっていくとしこの周辺。
終戦の日はもう我慢せずにケーキを食べに行く! と息巻くとしこだけど……
戦争は終わったはずなのに、敗戦国としての試練がつぎつぎ襲ってくる。

本当にすごい話ですよ。この辺の、終戦後の満州のエピソードはほかの本でも読んだことがなくて、いままで触れてこなかった。上田家の居住していたアパートメントに三千人の日本人が避難してきて、ちからをあわせて共同生活を始めるんですよ。すごい……
「絵がかける」ことはここでもフルに活用される。

5巻の予告が最後にあったけど、不穏な感じですね……1巻の冒頭で語られてるからわかってるけど、つらいエピソードが増えそうだ。

フイチン再見! 5 (ビッグコミックス)
フイチン再見! 5 (ビッグコミックス)

4巻で終戦。5巻は終戦後ハルピンに残った日本人に起きたこと。
敗戦国・日本へ、掌を返したような中国・ソビエトからの仕打ち。
あちこちで起こる残虐な出来事が「明日はわが身」という不安のなか、としこたちは家族でひっそりと生きていく。
それでも、人気漫画のキャラクターを拝借して書いた絵が売れるところなどは希望もありますね。
また、日本が負けても変わらずに支えてくれる現地の中国人のあたたかさ。
行きずりの中国人兵士から受けた寛大な対応もあって、どんな状況でも100%つらいってことはないのかもしれないと思える……

シベリア抑留の話もそうだけど、終戦で日本はあっという間に復興に向かって、昭和30年には近代化が進んでるのに、海外に取り残された人たちの終戦後の苦労は大変なもの。
自分の国に帰るってことがこんなに大変だとは。

劣悪な状況の中、やさしくしてくれた人たちとも別れて日本へ向かうとしこたち一家。
でも、移動を始める前にとらわれてしまったお父さんがどこでどうしているか気になる……
っていうか、ああ……つらい展開です。そして6巻へ続く。


【続きを読んだら追記します】
ラベル:漫画家マンガ
posted by 藤村阿智 at 10:44| マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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